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「愛さずにはいられない」
第一章 愛さなきゃよかった

愛さずにはいられない 9

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道明寺に入社した当初のあたしを見る周囲の目は厳しかった。

英徳出身とはいえ高卒では道明寺に入ることすら困難なこと。
それが秘書課に配属となりいきなり専務付となった。
周りが訝しく思うのは当然だ。
周囲の人間があたしと司が男女の仲にあることを気づくのだってそう遅くはなかったのだから。

確かに司とのコネクションがなければ絶対にかなわなかったことだ。

今から考えたらあの楓社長がよく許したとも思う。


ただあのときはの司はずっと精神状態が不安定で。
楓社長に命じられた渡米もわずか一ヶ月で帰国。
英徳大に一応籍を置いてはいたが高校時代よりも行かなくなってしまった。

このままではさすがにまずいと思ったのか楓社長は形だけでもと「牧野つくし」を直属の秘書にするという条件の下で司に専務の肩書きを与えた。

楓社長の中では、まだ司があたしのことを好きだと言うことが前提であったから。

あたしははっきり言ってただのセフレで、まさか餌にされるとは思わなかったし、さらにその条件を司が飲んだというのには正直驚いた。



_____まあ、自分で言うのも何だけどこんなに都合のいい女、そうそういないもんね。
司の言うことは絶対。再び関係をもってからあたしは司に逆らうことも反抗することも、口答えのような軽口も、いっさい叩いたことがない。

動機はどうあれ、さすがはDNAと言うべきか道明寺の仕事を覚え始めてからはその活躍はめざましく、出張という形で世界各国の支社に派遣されている。


____ただ、あたしは知らなかった。
一見、華々しく光り輝く上流階級の、闇はとてつもなく暗くて、深いのだと。


合計16個になった煙草の焼き痕を見つめながら、つくしは1つ目の烙印が押された、あの日のことを思い出していた。


何もかもを失ったのは司に処女を奪われた日ではなく、あの日であったかもしれないと想いながら。














司の秘書として一年たった頃だった。
その頃道明寺はある企業との契約が難航しており、その次第によっては今後のグループの行方を左右するものであった。
そして、そのプロジェクトの責任者が当時専務就任一年目の司だったのだ。


司も焦りを感じていたのだろうか


そんな折り______________________



司からある一つの提案を受けた。
極めて原始的かつシンプルな捧げ物を用意することを。

「お前の頼み方次第では契約の内容をもう一度見直すと言ってきた。
適当なホテルをとっておいたから挨拶だけでもしてこい。」とそんな意味のような事は言われたような気がしたがあの日の記憶はあまりにも朧気なもので全く覚えてはいなかった。
少女だった頃の鈍感で純粋だった自分はどこにもいない。
司の言葉だけで自分が彼に何を要求されているのか驚くほどすんなり理解することが出来た。

ただ、理解は出来ても司の真はさっぱり分からなかった。
あまりにも解せない質問を唐突にされたときと同じに思考が停止する。
ただ______嫌でもイメージは独りでに頭の中で繰り返される。
ホテルのベッドに組み敷かれる女の裸体。契約のために、仕事のためにと男に嬲られる女の痴態。
黒い髪に白い肌のコントラストのみが強く印象に残る、その女の顔が。

あまりのことに目を見開き司を見つめ直すも彼の表情に変化はなく。
寧ろ彼の眼は残酷な光を帯びていたかもしれない。
その眼が、早く頷け、早く俺の思うとおりの答えを出せと暗示していた。


______頷かないわけにはいかなかった。



自分が、何の取り柄もない自分が『専務秘書』という肩書きをもらっているのは他でもない司がいてこそのことなのだ。
自分の代わりはそれこそいくらでもいる。
もしもここで行きたくないと言えば敢えて司が自分に固執する必要はなくなってしまうのだ。
司のためならば、自分の尊厳を貶めてまで喜んで足を開く女性が一体どれだけいるだろうか。
嫌だと一言司に伝えれば自分を何の感慨もなく切り捨ててしまうのは目に見えてはっきりしている。
何度ビジネスの場でそんな司を見てきたことだろう。

ここで断るわけには絶対行かない。
自分は司に捨てられたときにどうやって生きていけばいい?どうやって心の琴線を保てばいい?

勿論必ずそんな時が来ることは分かっている。
分かっているから___だからその事実を先延ばしにしたいんだ。
その時が来ることを出来うる限り遠ざけたいんだ。

ぎゅっと唇を噛みしめ、俯き加減にコクリと頷けば司は勘違いしてしまうほどに優しく自分を胸に引き込んだ。
頭を撫でる手の温かさに愛されている錯覚すら覚えてしまう。

司にしてはお気に入りの玩具が自分の操縦するままに操られていることに喜びを感じているだけだと分かってはいても、そっと司の背中に自分の愛情の全てが彼に伝わるようにと手を回した。



あなたのためだったら自分はどこまでだって落ちていけると、捻くれ歪んだ愛情ではあったが。





_________________________






つくしは16個目の傷跡をさすりながら、もう本当に引き返せないところまで来てしまったのだと思った。
誰一人、何一つ残らなくったって自分には司さえいればそれでいいのだから。他の何を失っても。
司には、それほどの価値があるのだ。



たとえ、いつかこの生活が破綻する日が来るのを知っていたとしても。




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