FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←愛さずにはいられない 65 →愛さずにはいられない 67
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 短編
もくじ  3kaku_s_L.png 中編
総もくじ  3kaku_s_L.png ガラスの林檎たち
総もくじ  3kaku_s_L.png お題シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 更新のお知らせ
  • 【愛さずにはいられない 65】へ
  • 【愛さずにはいられない 67】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「愛さずにはいられない」
第三章 愛さえあれば

愛さずにはいられない 66

 ←愛さずにはいられない 65 →愛さずにはいられない 67

病棟から少し離れた玄関ホールのラウンジ。
時間も時間で人気も少なく、込み入った話をするには最適な場所だった。
適当な椅子に腰を下ろした司は、類が自動販売機で買ってきたであろう缶コーヒーを受け取り、ちょっとそれに口をつけると顔を顰めてテーブルに置き直す。

そう言えば__いつだったか、どこか適当に選んで入った店のコーヒーの味に薄いだの不味いだの文句を付けてつくしに戒められたことがあった。
あの時彼女は何と言ってたか___確か、こんな店でブルマン100%なんて有り得ないんだから自分の家と比べないよーに、とかそんな内容だったかもしれない。
今となってはこんな些細なやり取りと、その時の彼女の表情まで一つ一つはっきりと脳裏に浮かんでくるのに、何故もっと早く気付くことが出来なかったのだろう。
いや、本当はとっくに気がついていたのかもしれない。
それを認めたくなかったのは自分のエベレスト並に高いプライドのせいなどでは決してなく、もっとシンプルなことだった。
自分は恐れていたのだ。
彼女を失う事を。
自分が彼女を愛していると認めることは、彼女を諦めることだったのだから。

過去の自分に腹を立てながらも、いつまで考えても堂々巡りになってしまう考えを払拭しようと首を左右に振る。
今類に伝えたいのはそんな事ではない。
いかに自分が過去の行いを悔いていて、過去の自分を絞め殺したい程に深く懺悔の念をつくしに抱いているなんてどうして言うことが出来よう?
みっともなくて恥ずかしい事ばかりしてきた自分ではあるが、どこまでがその限度なのか分かっているつもりではあった。

とはいえ、伝えることが多すぎて、中々初めの言葉が口をついてこない。
まずは何から切り出せば良いのだろう。

「久しぶりに見た。牧野の___あんなに屈託のない笑顔は。」

「・・・・・・・。」

「最後に牧野に会ったのは__半年前のミュンヘンの通りのカフェで___丁度あの時大使館で大きなパーティーが開かれてて。
ああ、司には会えなかったんだっけ?
その時に少しだけ会話して、俺、、聞いたんだよね牧野に。」

「・・・・・・・何を?」

「今、あんたは幸せなのかって。」

類のこの言葉は鋭いナイフとなって司の心を深く抉った。
幸せであったはずがない。
つくしが自分と過ごした5年間の中で幸せだと言えるような日が彼女の中で果たして数日でもあったのだろうか。
5年間もの間、肉体的にも精神的にも激しく痛めつけて、自分の中の鬱憤を全てつくしで晴らして。
その答えを聞くのが怖かった。
幸せなどと彼女が答えるはずがないのだから。

「__あいつ、何て言ってた・・・?」

それでも、聞かないわけにはいかないだろう。
もう決してつくしから逃げないと決めた自分なのだから。

「___最初は、分からないって。」

「分からない?」

「うん、幸せの定義って一人一人違うものじゃない、とかはぐらかして。」

コーヒーに再び口を付けた類が、フっと微笑み更に続ける。

「じゃあ、あんたの定義で言うと幸せなのかって聞き直したんだよね。
でも、すぐに聞かなきゃ良かったかなーって。
だってあいつ、これまで見たこともないくらいに寂しそうな笑顔ですごく幸せだってそう言ったんだから。」

寂しそうな笑顔のつくしが想像出来すぎるから、気持ちを殺して表情を作るつくしを飽きるほどに見過ぎてきたから、だからこれ程までに胸が軋む。

抱きしめてやりたかった。
気が済むまで泣かせてやりたかった。
出来ることなら彼女が自分を殺すことを覚える前に戻って全てをやり直したい。
彼女と初めてであったあの日から、全部やり直したい。
本当は彼女を苦しめる全てから守ってあげたかったのに。
本当は彼女の幸せだけを願ってあげられたらと思っていたのに。
彼女が壊れるまでに追い詰めて、ぐちゃぐちゃに踏みつけて。
最低なんて言葉じゃ言い表せられない程に最低で最悪で畜生にも劣るほどの行いを彼女に強いてきて。
今更彼女の幸せを願うことすら、許されない立場にあるというのは理解しているつもりだった。


黙りこくる司を不審に思った類が問い直す。


「牧野は___幸せだったんじゃなかったの?」

問い直された類の言葉に引き上げられるように視線を合わせると、どこか物憂げそうな類の眼が写った。

性格も生き方も愛情の示し方もまるで違う二人ではあったが、より深いところでは似通ったところがある。
同じような環境で同じような考え方をするように育てられて、そして同じ女性を同じタイミングで愛してしまった。
やはり、類にだけは隠しておくことはできないだろう。
ことにつくしの事に関しては、このまま知らせずにいるのは不可能だ。

「俺が__俺が殺した。」

「・・・・・は・・・?」

「俺があいつを、本当の意味で殺したんだ。」

流石に予想外の言葉であったのか、眼を瞬かせて類が聞き直す。

「殺した・・・?殺したって・・どういうこと・・?」

「始めは___そうだな、何か物珍しかったんだよ。
俺を名字で呼び捨てにする奴なんて初めてだったし、いきなり殴りかかってきたかと思えば、わけわかんない事で怒って泣き出して。
最初は、それこそ『マジうぜえ貧乏女』って認識しかなかった。
だけど____


「だけど・・・?」

「あいつにもうここには来ない。
付き合ってたこととか忘れてくれって言われたときに、よく分かんねえ衝動みたいなのが俺の中に疼いて。
今から考えれば俺は単にあいつを失うのが怖かっただけで、でもそれを恐れている自分も認めたくなくて、全てをあいつのせいにしたかっただけだった。
だから____だから俺は___あいつを__

「牧野を_?」

「あいつを___力尽くで自分のものにしようとした。」

類の眼がこれ以上無いほどに大きく見開かれる。
目の前の男が何を言っているのか理解出来ないと叫び出しそうな程に。

「レイプ、したんだ。
あいつを、力ずくで犯した。」

何かが壊れる音が聞こえた。
レイプ?強姦?
言ってる言葉の意味が理解出来ない。
目の前のこの男が話してるのは本当に日本語なんだろうか。

「それが始まりだ。
あいつは拒絶しなかった。
俺に何をされても何を言われても。
あいつに手を挙げたことなんか、一度や二度じゃなかった。
肉体的にも精神的にも追い詰められるだけ追い詰めて。
そして、挙げ句の果てには俺のせいであいつは子供を亡くした。
流産、したんだ。」

「りゅうざん・・・・・?」

度重なる重い単語に言葉が詰まる。

「そして先月の初めに、病院で自殺を図った。
未遂に終わったけどな。
それで__目を覚ましたら、あいつは全てを無かったことにしようとしていた。
話す言葉も行動も全てが幼稚園の年少程度で。
実際そこから記憶も止まっている。
今のあいつが認識できているのは、あいつの両親と、それから俺くらいだ。」

感情の全てを無くしてしまったような瞳で司が更に一言言い放つ。

「だから俺は、いつかあいつがあいつを取り戻すまで傍にいると決めたんだ。
あいつが正気に返れば、絶対に俺から離れていく。
無残に捨てられる日が必ずやってくることを知ってるから___だから俺は、不幸になるためにあいつの傍であいつを守り続ける。
それがどれだけ屈折してるか理解しているつもりだ。
それでも、屑みたいな俺には丁度お似合いの生き方だ。
そう思わないか?」

類は自身を嘲笑するような微笑みを貼り付ける司に憐憫だとか哀れみだとかそんな言葉しか浮かばなかった。
あるいは、もっと早くにこの事実を聞いていれば司に掴みかかるなりなんなり暴力的な衝動に出られたのかもしれないが、あまりにも時間が経ちすぎていた。

『憐憫』に『哀れみ』。
類がこの言葉を誰かに使うのは常に軽蔑だとか、そんな類の感情が合わさっているものだったが、今回ばかりはそんな言葉では括りきれない。

何故ならその感情の大部分は、司ではなくつくしへと向けられたものだったのだから。
そして、つくしへと向かう感情は最早崇拝に近いものがあったのだから、彼女自身を軽蔑するなんて自分にはあまりにも考えられないことだったのだ。

たとえ、その生き方を選択したのが彼女自身であったとしても。


0574 Web Site Ranking

にほんブログ村 二次小説

関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png ガラスの林檎たち
総もくじ 3kaku_s_L.png お題シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 短編
もくじ  3kaku_s_L.png 中編
総もくじ  3kaku_s_L.png ガラスの林檎たち
総もくじ  3kaku_s_L.png お題シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 更新のお知らせ
  • 【愛さずにはいられない 65】へ
  • 【愛さずにはいられない 67】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: ゆずもち様ヽ(*´∀`)ノ

コメントありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))
そうですよね笑
やっぱ類は王子様!司は帝王!つくしは……うーん、なんだろ雑草シンデレラ?(笑)
司は一歩間違えればストーカーみたいなとこありますよね笑
やーでも、うん、司にならむしろストーカーされたい笑笑
つくしちゃんも原作初期は大迷惑だったんでしょうけども笑

つくしがあんな状態で誰が一番辛いかってやっぱ司なんですよね
つくしは夢の中にいる今が1番幸せなところ、あるでしょうからね
だから司も負い目のせいで類に対しても巧に対しても強気には出れない
もう胸を張って俺の女、とは言えないですからね

もちろん背負うべき十字架ではあるんですが、彼はつくし愛しさの余り必要以上、というか過分なまでの十字架を無理矢理背負おうとしていて、かつそれがつくしへの償いになると思ってるんでしょうね。
でもそうじゃないんですよねー
どこまでも不器用な男です。

ゆずもち様のそのアイデアいいですね!・:*+.(( °ω° ))/.:+
是非とも使わせて頂きたいです。
司は自分からは絶対つくしにキスとかしないし
(罪悪感のせいで)

いろいろありがとうございますほんとに!(//∇//)
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛さずにはいられない 65】へ
  • 【愛さずにはいられない 67】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。