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「ガラスの林檎たち」
第一章 誰にも言えない

ガラスの林檎たち 1

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どんよりと淀んだ空だった。

日本へと帰国するのは4年ぶりだというのに、生まれ育ったこの土地は司を歓迎する気は毛頭無さそうだった。
予報では夕方から今夜にかけて大雨となっていた筈。
4年ぶりの帰国日に限って大雨というのは自分に対するあてこすりなのだろうか。

そこまで考えた司ははたと気づき、何かを払拭するように首を振り、頭に浮かんだ馬鹿げた考えを振り払う。

あまりにも馬鹿馬鹿しいことだ。

一体何に対するあてこすりで、誰に対するあてこすりだと言うのか。

大雨の降る夕方に自分がこの世で初めて愛した女に、初めて恋い焦がれた女に、初めて渇求した女に無残に捨てられた。

自分にとっては人生の転機とも言えるあの雨の日の事、しかし無残に自分を捨てた女にとっては、所詮ちょうどちり紙をゴミ箱に投げるのと寸分違わない、造作も、何の感慨もない出来事に過ぎなかったのだ。

その日は彼女から初めて現実を突きつけられた日でもある。

あんたは所詮、友達以下の存在で家族以下の存在で、あたしにとっては何の価値も何の感情も動かない道ばたの石ころ同然の存在なのだと。

運命だと信じていた。
運命だと信じていたかった。

自分に『愛してる』の意味とその尊さを教えてくれた唯一無二の運命の女。

陽だまりのようなその笑顔に。
自分の名を呼ぶ桜色の唇に。
サラリと風に靡いたふんわりと柔らかな黒髪に。

彼女の全てに憧れていた。恋い焦がれていた。
出来ることならいつまでも見つめていたかった。
いつまでも愛していたかった。

最後の最後まで彼女への想いはどこまでも空回りで。
最後の最後まで彼女に抱いていた独り善がりな恋心をどうしても捨てきれずにいた。

それでも、決して見返りを求めなかった訳ではない

彼女を心から愛したのは彼女から心から愛されたかったから。
彼女を焦がれるほどに追い求めたのは、自分も彼女から求められたかったから。

いつか彼女は自分を認めてくれると、いつかは自分を振り向き、彼女の両手に抱えきれないほどの愛情で自分を包んでくれるのだと、根拠のない、だがしかし絶対的な自信があったのだ。

それが全て自分の作り上げた妄想で、幻で、まやかしだと気付かされたあの雨の日に、自分は全てを失っていたのだ。
いや、むしろ彼女によって失わざるを得なかった、とも言える。

自分が捧げた精一杯の愛情と想いを目の前で突き返された。
要らないものだと、彼女にとってはゴミに等しい感情なのだと。



___切望しながらも、ついぞ彼女から享受されなかった自分への愛情。



彼女から与えられなかった愛情を、狂うほどに追い求めていることに気付いたのは、もしかしたらあの日のあの瞬間のあの彼女の一言だったのかもしれない。

皮肉なことに、それを彼女が自分から本当の意味でいなくなってしまった瞬間に気付かされたのだ。

求めて求めて狂うほどに恋い焦がれて。
拒否されて拒絶されてゴミ同然に無残に捨てられて。
内側から何かがボロボロに剥がされていった。
張り詰めていた心の琴線は、彼女によってギリギリのところで保たれていたものなのだと気付かされた。

やがて彼女への愛とありったけの憎しみのぶつけどころを探し回って、もがいて、あがいて、暴れて。
何かに触れていないと、何かを壊していないと、心のバランスが保てなかった。
それは、完璧な孤独だった。
それこそ狂ってしまうかと錯覚したほどに。
事実、半分は狂ってしまっていたのかもしれない。

人の血を見ると、一時だけでも空になった心が満たされていくような気がした。
気分が高揚するだとか、興奮するだとかの感情は皆無だったが、それにも勝る精神安定剤のような効用が自分を安心させた。
人の血を浴びれば、その鮮明なまでの赤に、鉄の匂いに、自分がまだ生きていることを教えられた。

だが、その効用にも限界はある。

暴れて暴れて暴れ尽くして。
まるでドラッグのような精神を安定させるためだけの行為の効用の切れ目にはいつしか恐ろしい悪夢に付きまとわれていた。


_____もう道明寺家と一切関わりを持たない。


微笑んでいたのだ。彼女は、微笑んでいた。
彼女はいつだって自分の悪夢の中で残酷に微笑みかけて、自分が捧げた精一杯の愛情をビリビリに引き裂く。


____もう、決めたの。


彼女の目が冷酷に光る。
その目は決して自分の事など見ていなかった。
道端の石ころにでも目を向けるような何の感慨も感情もない目。


____もしあんたを好きだったらこんなふうに出て行かない。____さよなら。


言い終わる前に彼女は自分から背を向ける。
その背中に縋り付こうとしている自分の姿だけが妙に印象に残った。
彼女を引き留めさせる術を何一つ持たない情けない少年の姿。
去りゆく彼女の背中を懇願でもするように見つめる惨めたらしい少年の姿。



夢は決まっていつもそこで終わり。



目覚めの気分は大抵最悪なものだった。
いつしかその夢を見ることも、現実に向きあうことも恐れて、投げだして、逃げ出した。
学業に追われ、習得しなければならない業務に追われ、知らぬ間に心の奥底からその現実を追い出そうとした。
夢を見るのがどうにも恐ろしく、どれだけ身体を酷使した日でもベッドに入れば意識が覚醒してしまうのだ。
医師から処方された睡眠導入剤を飲もうにも、酔いつぶれるほどにアルコールを浴びようにも、一時的な気休めにはなるが夢に陥る寸前に目覚めようとする身体は睡眠持続が難しかった。

やけになって手当たり次第に女を抱いても、凍えそうなまでに震えていた心は収まらなかった。
一時の生理的な快感の代償は、違和感にも似た女に対する更なる嫌悪感と残る体液の不快な感触だけだった。



ポツリ、と窓に当たる雨の音が、不意に司の意識を引き上げた。



耳障りな雨音。
目障りな雨粒。
まるでつくしに無残に捨てられたあの日の自分を嘲笑うかのような、不愉快な雨だった。

何故今日という日に限ってセンチメンタルな気分に苛まれるのか。
司はこの時、何か心に疼いた確信めいた予感のような感情を持っていた
だが、それは決して良い部類のものではなかった。
強いて言うのなら、それは、いつも途中で目が覚めてしまう悪夢の続きのようなものに近いのではないかと。
寧ろあの雨の日の別れの延長のような、想い描きたくもない現実を再度突きつけられるのではないかと。

それがいつになるのか、誰にそうされるのかは皆目見当もつかなかったが、彼は本能に近いざわめきを確かに感じていた。
どん底の下にはさらにその下があるということなんぞ、とうの昔に知っていたからこそなのかもしれないが。


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