FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←ガラスの林檎たち 1 →本日分の更新遅れます
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 短編
もくじ  3kaku_s_L.png 中編
総もくじ  3kaku_s_L.png ガラスの林檎たち
総もくじ  3kaku_s_L.png お題シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 更新のお知らせ
  • 【ガラスの林檎たち 1】へ
  • 【本日分の更新遅れます】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「ガラスの林檎たち」
第一章 誰にも言えない

ガラスの林檎たち 2

 ←ガラスの林檎たち 1 →本日分の更新遅れます
成金趣味とは誰からも指摘されない程度に煌びやかに装飾された廷内。
その重厚な造りと内観はどことなく威圧的で、招待客に対して歓迎というよりも威嚇の意が込められている気がしてならない。
それすらも、今夜のパーティーを取り仕切るホストの為せる技か。

それにしても、と今春から支社で専務と肩書きを与えられた美作あきらが、深い溜息と共に、おもむろに一通の招待状を取りだした。
強制渡米をさせられてからの4年間という月日、一度も顔を合わさなかったかつての親友とようやくコンタクトが取れたと思えば、帰国記念だか副社長就任だかの名目で客寄せパーティーを開くことになったから是が非でも参加しろというような意味のことが、それはそれは大層恭しく、白々しいとも思えるような文章で綴られた招待状のみだけが送られてくるとは、いくら温厚なあきらと言えども不義理にも程があるのではないかと叱咤をしたくなる。

とはいえ、あきらにせよ、類にせよ、大学部に進学してからは散々ネグレクトしていた学業に追われ、家業に追われ、結局は司同様仲間内でもまともな連絡を取り合うことは難しくなってはいたのだが。

あきらが何かを払拭するかの如くグラスに注がれたシャトーブリヨンに一口口を付けた刹那、不意に後ろから名を呼ばれ、反射的にピクリと肩が動いた。

「____あきら。」

4年ぶりに発せられた懐古的なまでに懐かしいその声に操られるように振り向く。

「__つ、かさ・・・・・・。____久しぶり__だな。」

「ああ、4年ぶりくれえか?」

4年来の旧友にこれほど鋭い眼光を浴びせる男が他にいるだろうか。
いや、鋭いのは視線だけではない。
日本人離れした長身とスタイルに、洗練された立ち振る舞い。
その全てがどことなく威圧的なオーラを醸しだし、旧来の友人と言えども一抹の緊張感が背筋の辺りをゾクリと駆け抜ける。
流石は鉄の女の秘蔵っ子と言うべきか。
男だろうが女だろうが果ては動物だろうが見惚れられずにはいられない美貌も健在であったが、連日の激務と過労のせいか一目で分かるほどに顔色ははっきりしなく、また高等部の頃にはほんの少し残っていた頬の肉も削げていた。
不思議とやつれた印象もなかったが、彼の顔色に表情に削げた肉に、あきらは今の司の荒らんだ生活が反映されているような気がして僅かばかりの憐憫が心に疼く。

「4年ぶり___っとに、この4年間1度も連絡無しとは友達がいのねえやつだよな、お前も。」

はは、とあきらが冗談めかして、だが半分は本心から言ったであろうその言葉にも司のポーカーフェイスは崩れない。
ポーカーフェイスと言うよりはペルソナ___単に強固な仮面を被っていると言った方が正確なのかもしれないが。

「___俺はそんなに暇じゃねんだよ。
お前だって取締役に就任したばっかだろうが。
いつまでも10代のガキみてえにダチごっこなんかしてるようじゃ美作も先が知れるな。」

ダチ『ごっこ』との余りの言い草に流石のあきらも一瞬理性をかなぐり捨て憤慨の意を示そうとしたが、ふと視線を外した司のノスタルジーにでも浸るようなその瞳にそんな気力はまるで失せてしまった。

「まあ、それならそれでうちは安泰だけどな。」

口の端だけを上げる笑みで司が続ければ、本気で言ってるのか冗談で言ってるのか、どちらともつかないような文句に苦笑いをこぼすことしかできなかった。

「まあ、相変わらずっちゃ相変わらずな気もするけどよ___で、どうだったんだよ、NYでは?
お前が真面目に会議とか、資料作成してるとか想像つかねえな。」

司は、あきらのその質問には少し首を傾けたのみにとどまり、返事を返さなかった。
確かに司にNYでの事を訊くには野暮と言えば野暮かもしれない、とあきらは心の中で思い直す。
ジュニアとい立場上否が応にも聞こえてくる芳しくない噂とその行為。
あれほど学生時代に女に潔癖だったことが信じられないくらいに、NYにおいては浮名を轟かせ、衝動的な暴力によって手が付けられなかった10代の頃よりその生活は荒み、強姦だか、輪姦だか、乱交パーティーだかどこまで本当か知らないが、その手の噂は何かに付けてあきらの耳にも入ってきていた。

だがしかし、元々道明寺司という人物は冷酷で非道な英徳という学園の王者であり、彼はその傍若無人な振る舞いと残酷というには余りにも酷な行いを平気で他人に強いれる人間だったのは間違いない。
それは彼の家の複雑な家庭環境のせいでもあり、渇求しながらも得ることの出来なかった親からの無償の愛を享受できなかった不条理さからだったのかも知れないが。

それが彼の本来の姿ではないことに気付かされたのは、一人の少女のおかげだった。
恐らくは司が生涯で唯一求め、愛した女。
その少女と司がほんの一瞬でも人生が交差したことで、あきらは初めて司は人間らしい眼と人間らしい心を持っていたことを認識したような気がした。

____外見は、それこそどこにでもいるような女、だったんだけどな____

小柄で華奢な身体からは想像もつかないほどにパワフルで生命力に満ちていて、やたらと負けん気が強くて、でも不思議と儚いところもあり、どこかに女らしい一面も持ち合わせていたような、そんな女だった。
彼女の内面を真っ正面から見つめれば、誰だって彼女を好きにならずにはいられない。

目の前のこの男だって_____

そこまで考え、自分の考えに取り憑かれそうになったあきらが僅かに唇を噛みしめた。
こんな風に憔悴した親友の姿に、あきらはどこかその少女を___牧野つくしを責めてしまいそうになる自分がいることに気付く。


彼女さえ___彼女さえいれば____司は今でも____


堂々巡りになるこの考えを押し込めようと、グラスの残りを一気に煽りあきらが切り出す。

「いつまで日本にいるんだ?司。
このまま支社の方に異動って訳でもないんだろう?」

「__あ?__ああ、NYでは研修みてえなもんだったからな__
___まあ、肩書きなんて所詮は装飾品の一つにすぎねえし。
しばらくは支社の方にいることになりそうだ。」

副社長の肩書きを装飾品と言い切る司にまたもや苦笑いを溢しそうになるが、すんでのところで堪える。

「そう・・・・・か。
___なあ、司____もしかしてお前、今でも____

あきらが紡ごうとした言葉は、後方より司に掛けられた声に遮られる。

「___久しぶりじゃないか、司君。
いや、もう道明寺副社長、だったね?
本日はお招きいただきありがとう。」

「これは____城宮様。
いいえ、こちらこそ大変ご無沙汰しております。
今日はお越し頂いて誠に感謝します。」

城宮財閥は、道明寺財閥の並ぶ旧家の一つ。
明治の頃より、道明寺や大河原のように目立った業績の変化等々は見受けられず、どちらかと言えば、『城宮』というネームバリューだけで持っているような地味な印象を受ける財閥の一つであったのだが、今年度から支社長が代わり、それに伴いパッとしなかった業績が急激にアップし、新勢力として台頭しつつあるという。

新支社長の城宮貴之というのが曲者で、前任の社長が唐突に亡くなり、急遽就任された40を少し過ぎた程度の重役・取り締まりの中では最年少の七光りと呼ばれていたにも関わらず、その頭のキレ方と能力はとてもじゃないが、七光りとは程遠いものがあった。
今までのやり方では余りに古いと、大々的な社内改革を行い、急な人事異動に大規模なリストラなど最近の経済誌では専ら貴之の動向が逐一注目の的になっている。
それも、一時的なものではなく、軒並み上がっている株価は下がると言うことを知らない。
それだけに、道明寺としても城宮との繋がりは何としてでも勝ち得たいところであり、次回のプロジェクトの共同参加を道明寺自ら申し出ている企業の一つでもある。

「いや、こちらこそ光栄だよ。
ああ、そうそう司君。
今日はうちの娘も連れてきていてね____
私が言うのも何だがあれで中々____

「お父様。」

ふわり、と風が靡く音が聞こえた。

「お飲み物、お持ちいたしました。」

背中の真ん中ほどまである髪にウェーブをかけているのか毛先がクルリと巻かれており、どこか艶めかしい印象を受ける女だった。
薄く化粧の施されてはいたがまだ少女のような可憐さを持った、その女はふんわりしたデザインのピンクのシフォンドレスに身を包み、両手でグラスを貴之へと差し出す。

「雫か___。ああ、ありがとう。」

自分の娘を売り込んでくる狸じじいどもの強かさには慣れている司だったが、内心またか、と舌打ち混じりに乱暴に、雫と呼ばれた少女に視線を合わせた。

その刹那____ここ何年も揺さぶられたことのない司の感情がまるで心臓をわしづかみにされたかの如く、急速に疼き出される。

「司君__。紹介しよう、私の娘の雫だ。
永林学園高等部の二年生。
雫、道明寺司さんだ。ご挨拶しなさい。」

「・・・はい、お父様。
道明寺さん、初めまして、城宮雫です。
この度は副社長のご就任、並びに日本へのご帰国おめでとうございます。」

少女がいた。
雨の日に自分を置き去りにした少女が。
雨の日に自分をゴミと無残に捨てた少女が。
夢の中と同じように自分の名を呼び、夢の中と同じように自分に微笑みかける。

黒目がちの大きな瞳に、ぷっくりした桜色の唇。
ふわりと靡く黒髪にドレスに艶めかしく映える華奢な造りの身体。

その少女の名を、司は知っていた。
その可憐なまでに残酷で、冷酷な少女の名を。

「___まきの・・・・・・。」

それは、あの雨の日から4年という月日が経っていた、あまりにも遅すぎる___寧ろ、あまりにも早すぎる二人の再会だった。



0574 Web Site Ranking

にほんブログ村 二次小説

関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png ガラスの林檎たち
総もくじ 3kaku_s_L.png お題シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 短編
もくじ  3kaku_s_L.png 中編
総もくじ  3kaku_s_L.png ガラスの林檎たち
総もくじ  3kaku_s_L.png お題シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 更新のお知らせ
  • 【ガラスの林檎たち 1】へ
  • 【本日分の更新遅れます】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: ともちん様(*/ω\*)

初めまして!!
コメントありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))

はい、シリアスもシリアスでございます……
もう、またまたつくしちゃんをとんでもない目に合わせてしまう予定です……

書いてるわたし自身もハラハラしながら!?かきすすめて行きたいと思います。
今後ともよろしくおねがいします笑(^O^)

Re: ゆうん様ヽ(*´∀`)ノ


コメントありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))
いつも贔屓にしていただいて有難いです(*/ω\*)

雫=つくし、は大正解ピンポンぽんでございますが笑
そうなった経緯も後々出てくるんですがこーれが結構めんどくさい!!
読み手の方々も書き手にも辛く重たい話になることはまちがいないんですが・・・

愛さずにはいられない、の方もちょこちょこ投下していって完結に向けていきたいと思います!
頑張ります!!!(^O^)

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ガラスの林檎たち 1】へ
  • 【本日分の更新遅れます】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。