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「ガラスの林檎たち」
第一章 誰にも言えない

ガラスの林檎たち 16

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今し方問われたつくしからの質問にどう答えたらよいのかと一瞬思案する。
実のところ、自分にもよく分かっていなかった。
なぜ、助けたのかも、どうして雫だと認識していたにも関わらず、まるでそんなことはどうでもいいことなのだと考えたことも。
何もかもが、自分で自分を理解不能にしていた。
たまたま、、、偶然、、、
確かにそう言ってしまえばそれまでだったし、かと言え何も知らない他人に端的に説明すれば元カノ(のようなもの?)に酷似していたから衝動的に関わってしまった、助けてしまった、などという何とも情けなく格好のつかない話にもなってしまいそうで。
まあ、そんなことを一々説明して会話を繋げようという親切心も、そんな気概も起きない司にとっては極どうでもいいことではあったのだが。

「・・・たまたま。偶然。お前の言ったとおりだ。顔見知りだから助けたって、それだけ。」

「、、、顔見知り、だから、、、?じゃあ、あの状況なら誰でも助けていたってことですか、、?」

「___何が言いたい?結果助かったんだからそれでいいだろ?____ごちゃごちゃうるせえな。」

『うるせえ』と切り捨てられたことにつくしはやや目を瞬かせた。
少なくとも、牧野つくしならともかく、城宮雫として接する人間の中で今まで自分にこんな口の利き方をした人はいなかったし__あのパーティーの日は公式の場だったからか道明寺司本人からもこんなに粗野な物言いはされなかったのだから。
皆城宮のネームバリューに恐れ、戦き、雫自体がどういう人間かには執着せずただただ形だけは城宮の名の下に守られてきた。
自分と接する物は謙りの態度を見てて当然だったのだ。
傲慢な考え方とか、高慢な物の見方とか、そういうことでもなく、それがごくごく自然なことだったからそう考えていた。
城宮財閥と同格か、あるいはそれ以上の財閥の人間だからと言って自分にこのような言い方が出来るというのは『雫』にとっては驚異でもあったのだ。
つくし自体は自分の今いる地位だとか、肩書きだとかに別段こだわりがあったわけでもないし、不快だとか、侮蔑だとかいう感情は全く込み上げてこなかったが。

「・・・・あ、すみません。ただ、少し気になって。
私にとっては、道明寺さんのような方が私の顔を覚えていて下さったことだけでも恐縮なことですから。」

つくしが言うと、今度こそ司は冷笑を浴びせただけで再び彼女の方を向こうとはしなかった。
つくしも、そんな司に僅かに浅く息を吐き、視線を前に戻す。
瞬間、つくしはほんの少し何かの訝しさを覚えた。
パッと司の方を見直すと、刹那的にその訝しさが膨れあがるのを感じる。

_____あれ、、、?

なんだろう、とつくしは思った。
誰かに、似てる気がする。
誰かに。誰かに。
初めて挨拶したときにも、ダンスのパートナーだったときにも絶対にそうは思っていなかったのに。
今こんなにも明確に、はっきりとこの人の顔を見たような気がする。
どこか悲壮にくれたその横顔が、自分の中に強制的に眠らせていたイメージを呼び起こす感覚さえした。
暗くて、寂しそうで、荒涼に満ちていて、捕らえどころの無さそうなその瞳。
初めは父である貴之に似てると、直感的に思ったし、今でも眼の中の暗さだけは寸分違わないとも思うが___そうではない。
そういうことではなくて、もっと根本的な、感覚的な物ではなくて視覚的なイメージが、ぴったりとつくしの中で合致した。

「・・・ぁ。」

ポツリと漏らした声は司に聞こえたかどうか。
聞こえていたとしても、雫に完全に興味が失せたであろう司にとっては特に聞き返すでもなくどうでもよいことであったかもしれないが。

___あ、もん。

自分の記憶の中の荒涼とした眼の男と隣に座る男のイメージが何もかも当てはまった。
似てる、なんてものじゃない。
何もかも___違う箇所を探すのが困難なほどに容姿が酷似していた。
違うのは、その髪質。
亜門は司のようにパーマはかけてなかったはずだ。

___アモン、、、、

懐かしいその名を心で復唱すると、首に掛けてあるネックレスをぎゅっと握りしめた。
亜門は、つくしにとっては特別な男性だった。
処女を捧げた____とは、古い言い方だろうか。
実際には捧げる、なんていう厳かなものでは全くなかったわけだが。
亜門はつくしの初めての男性だった。
初めて彼女にキスの仕方を教えたのも、セックスの仕方を教えたのも、ひいては男をどれだけ利用できれば生きていけるかを教えてくれたのも、全て彼。
そこに恋愛の感情は、つくしにとってはこれも不思議なことだったのだが一片も沸いて出たことはなかった。
勿論彼の事は好きだったし、それなりに身体の関係も当時はあったが、お互いに全く惚れた腫れただのそんな話は一度もしなかった。
セックスなんて、つくしは大層立派なものに思ってて、誰かと関係を持てば何かが変わるのだろうと勝手に想像していたが、性交なんてのはそんなに大した物ではなく、ああ、こんなもんか、という感想しか持たないつまらないものだった。
一度寝たからと言って相手に情が移るわけでもない、ただの金銭と引き替えに出来る全く持って下らないことだった。
それを教えてくれたのも亜門で、だからこそ彼に恋愛感情がわき出るはずもなく。
それでもつくしに亜門は十分特別な存在だった。
いつ頃から会わなくなったのかも、その切れ目も思い出せない彼のことが。

___、、、もう一回だけ、会ってみたいような気もするし、もう二度と会いたくないような気もするし。____結局、、、彼って何だったのかな。

司の横顔を見つめながらも、つくしが虚無感に巻き込まれるように心の中で独りごちた。

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