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「ガラスの林檎たち」
第一章 誰にも言えない

ガラスの林檎たち 20

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「大変だったって、、、お母様が?__どうして、、、いいえ、私知らないわ。一体、何のこと?」

貴之の言うとおり、何となく恵について言われるであろう事は想定内だった。
貴之が感情らしきものの片鱗を見せることがあるとしたらまず間違いなく恵のことだけで___ただでさえ苦手な義母であったが、人一倍貴之が気にかけている女性で、恐らくは彼の唯一愛した女性ともくれば、つくしとしてみればこの話題は当然面白くない。
いつ言われるかと内心ビクビクものだったからこそ、無意識のうちに恵の話題に飛び火しないかと気もそぞろだったのだ。

「あいつ、今日はお前を誘って食事に行くって。」

「、、、え?」

「それがいつまで経ってもお前が帰ってこないし、携帯も繋がらないし、あいつは気が狂いそうだった___俺のとこにも30分起きに携帯が鳴った。
塾なんかじゃないよな?
昔の悪癖でも出たんだろう?
お前は、、、いや__どういうつもりだ?
お前がいつ___あいつを___恵を無下にできる権限を持ったって言うんだ?」

口調は静かだったがやはり微かに怒りを湛えているのは隠し切れていなかった。
必死で自制している貴之の様子に内心怯んでいた自分を取り戻す。
やっぱり、、、相当むかつく。
腹立たしい。
反吐が出そうになるくらい。
恵、恵、恵、恵、恵、____
その名を貴之の口から聞くのは耐え難い。
薄気味が悪くて、トラウマにもなった恵の存在を、更に確固たるものとして定着させたのは間違いなく___貴之だ。
貴之が愛している女性だから!
自分を__雫を身代わりにしてまで傍に置いている存在だから!
だから、、、恵という存在が何よりも苦手で、、、嫌いという感情よりも憎しみが強く出てしまう。
どこの世界に自分の義母に嫉妬する娘がいる?
みっともなくて、恥ずかしくて、とてつもない苛つきに苛まれる。
妬ましくて妬ましくて、彼の口からその名を聞くことさえ、歪んだ心を更に軋ませるというのに、彼はこれ以上自分を惨めにさせるつもりなのだ。
彼が感情をこんなにハッキリ___この物言いをハッキリというとすればだが___露わにするのも、自分を戒めるのも、全て恵絡みで。
普段は自分にとことん甘く、身代わりの愛情を惜しむことなく注いでくれるのに、彼女のことになると自分は彼にとってはただの身代わりの人形なのだと再確認させられる。
そんなのわかってる。
とっくにわかってるけれど。
それでも___恵さえいなければ彼が注ぐ愛情は自分だけに集中するはずで、自分は彼に甘やかされ愛された存在のまま、ただ一身に彼だけを見つめられるというのに。

「、、、私、お母様とお食事するなんて、そんな約束してないわ。
そんなの知らない。お母様が勝手に、、、決めた事じゃない。知らないです。私は悪くないわ____」

恵への苛つきとともに、貴之に対する怒りも沸々とわき始める。
なんて無神経な男だろう。
自分の前で恵の名を引き合いに、責めるような言い方をするなんて。
自分にとって一番効果がある注意の仕方だと知っているからに違いないのだ。
自分は、、、、一度たりとも貴之を愛しているだとか、好きだとか、そんな感情を伝えたこともなかったが、彼の方は多分、それを察知しているはずだ。
彼はどんなに些細なことでも何一つ見逃さない人物だったし、ことに自分の事に関しての洞察力はたまにゾッとするくらいだった。
だから、自分にとって、雫にとって、恵という名がどのような効果をもたらすかを彼は知っているはずなのに。
彼女だけに向ける慈しむような眼差しを自分がずっとねたんでいたことに彼は気付かないはずがないのに。
恵が、恵が、お母様が。
この男の頭にはそれしかないのだ。
自分の気持ちなんて、恵の前ではどうでもよいのだ。
何て酷くて、、、悪魔のように自分を魅入る人なのだろう。

「今日はあいつの退院初日だったんだ___
それはお前も分かっていただろう?
恵がどんな気持ちで一人で邸にいたか、お前は知ろうともしないのか?」

「知らない。知りたくもない。あんな人の___」

「あんな人?母親に対してそんな口の利き方をするな。
そんな言い方は許さない。
俺がお前に___許さない。」

ここで始めて貴之は声を荒げかけた。
恵を悪く言うのは彼としても聞き逃せないところがあるのだろう。
だが頭に血が上っているつくしにとっては、彼のそんな調子はどうでもよかった。
沸騰しかけた自分の熱を冷まさせる材料などどこにもない。
目の前に座っている彼の態度次第でどうにもなることなのに。
その言葉に、その事実に、一瞬我を忘れた。
カッと頭に血が上る。

「あんな人よ!
私がいつ___あの女を___あんな女、母親なんかじゃない!母親だと思ったことなんか一度もない!
あんな人、だいっきらい!!」

「雫っ!」

「嫌い、嫌い、だいっきらい!!
なんで、、、なんで庇うの!?
そんなにあの人のことが好き!?
そんなの許さない。私が許さない!!!
あんな女、一生病院でもどこでも入ってればいいのよ!!
二度と帰ってこなくていい。
その方がずっと平和よ。
あんなに恥ずかしくて、気が触れてる母親なんて私は要らない!!」

つくしの言葉に、完全に部屋の空気が変わった。
確実に、自分は超えてはいけない一線を越えてしまったのだ。
サッと貴之の顔に誤魔化しきれない怒りがにじみ出る。

「__言いたいことはそれだけか?、、、出て行け。俺がお前を、殴る前に、今すぐこの部屋から出て行け。
お前が女じゃなかったら__絞め殺してるところだ__」

とうとう耐えきれなくなったのか、感情のままにつくしを殴ることが出来たらどんなにスッキリするだろうという顔になる。
静かだったが、、、その声は果てしない怒りに満ちていた。
自分の愛する女性を侮辱されたことへの憤り。
それがまっすぐにつくしへ向けられていた。

「何よもっと言っていいの?
気付いてないなら言わせてもらうけど、あの人は、お母様は一度だってあなたを愛したことがないのよ?
見てれば誰でも気付くし、誰でも分かるわ。
お父様の大好きなお母様はあなたを、愛してなんか、いない!
一度だって、これまで一度だって!」

ガチャン、と皿の割れる音がした。
手にしていたマグカップを憤怒の形相で床にたたきつける貴之と眼があう。
その顔に、さすがにつくしも頭が僅かばかり覚めた。
ゾクリと背筋が凍る感覚さえする。

「戻れ__自分の部屋に__出てけ__今すぐだ!」

やっとのことでそれだけ言った貴之をキッと睨み、一瞥くれると、なるべく恐れ怯えている感情を見せまいと踵を返し、部屋に戻った。
悔しかった。
妬ましくて、悔しくて、、、、やはりあの母親には完敗したのだと、認めるのが血を吐くほど辛い。
こんな夜を一度も経験してない訳じゃないのに。
初めてわき出る感情でもないのに。
それなのに、、、つくしは、今この瞬間ほど恵を疎み、恵が自分の母親であることにこの上なく嫌悪を感じたことはなかった。
一番自分が恵を気にくわない部分を__貴之のことを恵が一度たりとも愛したことがないと__卑怯にも自らそう言って彼の自尊心を傷つけ、痛めつけた自分が何よりも許せなかったからだ。


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さとぴょん様(*^_^*)

そうですそうですそうなんです笑
貴之が深く深く愛しているのは恵であって、正直、、、つくしの想いは報われない話になっちゃいますねえ結局は。
いえ、つかつくなんでそれはまあ、残念ではないのですがw
そうですね、結構仮面夫婦じゃないけど、仮面親子?疑似親子感が抜けていなかったのですが、雫が初めて感情を爆発させようやく貴之も、、、って感じですね笑

貴之と恵の経緯は追々と思っていましたが、第二章ではあまり書けるとこがないかなと思いまして(第二章は亜門×つくしかも?笑)今夜更新の21話と22話に書いてしまいましたw
読んで頂ければ分かると思うのですが、貴之が恵を妻にした経緯がかなり強引なんです実は。
恵はそのせいで心を壊し、結果として今の精神状態になった。
だからつくしが貴之にいった『恥ずかしくて気の触れている母親』というワードがどうしても許せなかったんですよね、、、。
貴之は恵のことを愛しています。
ただ現状恵が彼のことをどう思っているかは謎。
一概に愛していないとも言えないが、彼の方は前と同じ気持ちで彼女の前に立つのは難しいといった心情でしょうか。苦笑

つくしの気持ちを利用していることは間違いないです。
彼女は完全に恵の身代わりで、、、。
プロローグも、鋭い!です!笑
『雫』の声を聞いてしまうとどうしても恵と重ねられなくなるからそういった。
身勝手で不器用な男なんです。

今日と次回更新の本編は恐らく貴之と恵の話になるかな?
おつきあい頂けたら幸いですm(_ _)m笑
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