「ガラスの林檎たち」
第一章 誰にも言えない

ガラスの林檎たち 21

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「やあっ!いやあ!やめてえ!来ないで、来ないでよ!あっちに行って!!あ、や、やあああああああっ」

女の声が頭に響く。
自分がこの世で最も愛した女の声が。
その声は絶望に歪み、狂ったような拒絶を繰り返し続けていた。

「いや!いやあ!!触らないでよお!!お願い、お願いだから、あ、ああああ、い、いやあ、、、、」

女は触らないでと言った。
頼りない抵抗を繰り返し、卑怯にも自分は男の力で女を押さえ込み、女の立場を、、、徹底的に分からせようとした。
眼に涙を湛えて、泣き叫んでいる女を見るのは、気分が良かったのだ。
自分のものにならない女なんかいない。
自分を拒否するような女は絶対にいてはならない。
そんな愚かな自分の驕りが引き起こした狂宴。

「あ、あ、お願い、、、。
なんでも言うとおりにするから、、、
こ、これだけは許して、、、!
お願い!お願い!お願い!やめてよ、お願い、、、」

乱暴に女の乳房を揉みしだき、太ももを撫で回した手にとうとう抵抗を止め、泣きじゃくりながら懇願した女を見ているのは楽しかった。
自分がよもやこの女のことが好きだとは思っていなかったから。
愛するようになる存在だとは思っていなかったから。
だから、、、自分が気にくわない女を自分の手で貶めている、あまつさえプライドまでかなぐり捨て、自分に服従しようとしている、そんな女を見ているのが楽しくて仕方なかった。

「へえ、、、なんでもしてくれんの?」

自分は笑っていた。
信じられないくらい愉快だったのだ。
女が自分に屈服した。
その事実に、どうしようもなく優越感を感じた。
一旦凶暴な気分になれば女の怯える顔でさえ気持ちいいものだから。

「じゃあ、、、口でするか?
そうすれば、俺の気も変わるかもなあ?」

女の顔から血の気が引いた。
その言葉の意図するところは女にもわかったようで。
絶望に打ちひしがれた女に選択肢などなかった。
ソロリと起き上がり、更に泣きそうな顔で自分を見上げる。
その顔が信じられない、と言っていた。
もしかしたら悔しさと怒りもその顔には滲んでいたかもしれない。
女にしてみればまさに屈辱的な行為で、、、だが女はこの時抱かれるよりはマシだと思っているのが手に取るように分かった。
だから俺は、馬鹿な女だと笑った。
愚かな女だと嘲った。
どのみち止めるつもりなんぞ毛頭ないのに。
ただ自分に一喜一憂する女を見ていたかっただけ。
言葉で詰り、貶めていくのはことさら楽しかった。

「ほら、、、早くやれよ。」

言い終わらないうちに女の手を無理矢理引っ張り、猛り狂った自分のそれを掴ませた。
そのまま女の顔を押しやると口を割らせて突き上げる。
何度も何度も何度も。
女にしてみれば初めての経験だったのだろう。
屈辱と苦しさに顔を歪ませ、、、それが更に自分を煽った。
喉の奥まで突き破るかのように、女が息も出来ないくらいにめちゃくちゃにして、そのまま白濁とした液を女の口内に注ぎ込む。
ゲホゲホと咳き込んだが、吐き出すことは許さなかった。
全て飲み込んだ女の顔に幾筋も涙が伝っていて。
さっきまでは楽しかったのに、放心したような女の顔に、胸が痛んだ。
痛くて痛くて張り裂けそうで。
突如わき出たこの感情が理解不能だった。
理解不能すぎて、、、何故だか頭の中が熱くなった。
腹が立った。
この感情に。
この胸の痛みに。
全て忘れてしまおうと目の前の快楽に手を伸ばす。
もうこれで解放されると信じ切っていた女は、抑え付けられた手に必死で抵抗した。
暴れて、もがいて、足掻いて。
本気の男の力に適わないことなんてとっくにわかっただろうに。
女はいつまでも抵抗を止めなかった。
それだけはやめて。
それだけはダメだと泣きじゃくった。

「ダメじゃねえ、、、いいか?お前は今から俺のものになるんだよ。
お前の感情なんかしらねえ。
俺がそう決めたからそうなんだ。
お前は__俺のものだ。」

ろくに愛撫もしていない女の中に一気にねじ込むと、女はあまりの痛みに叫びながら、背中を反り返した。
痛い痛い痛いと泣きわめく女を更に痛めつけるように腰を動かし始める。
女の陰部からは血が飛び散り、シーツを一面に汚していた。

「なんだ、、、お前初めてだったのか?
ならもうすこしちゃんとしたシチュエーションでやりゃあよかったな?」

女は__処女だった。
その事実に、自分の心はどうしようもなく満たされた。
征服感と充足感をいっぺんに味わう。
最高の気分だった。

「あ、、、やめ、てえ、、、抜いて、、、は、ああ、あああ、、、お、おね、、が、、、お願い、、、、」

女の眼に既に生気はなかった。
壊れた人形のように頼りない拒絶のみを繰り返し、もうどうにも出来ない現実から必死で眼を背けようとした。
こんなはずではない。
好きでもない男に純潔を散らされたという事実が。
彼女を絶望の淵まで追い落とした。

「やっぱいいな、処女は、、、。
やりまくってるそこら辺の女とは締め付けが違うもんなあ。
そうだろ?、、、恵。」

痛みに朦朧とした女はその言葉を最後に意識を失った。
掠れたような叫び、受け止めきれない恥辱に顔を歪ませながらも。



「あ、、、いや、、、あ、あああ。」

女が震えている。
自分のお腹に手を当てて、絶望には更に底があることを知ったかのように。
事実、、、そうだったから。

「い、いやあ、、、、あ、あああ、、い、いやあ!」

自分は女に対して一度も避妊をしなかった。
執拗に夜毎何度も抱く自分に、次第に女の方も抵抗しなくなり、好き放題蹂躙していたのだから、その結果だ。
何を悲しむことがある?
何を絶望することがある?

「いや、、、産みたくない。」

「何言ってるんだ?恵。
お前はそのお腹の子を産むんだよ。」

「いや、、、産まない。産まない。産みたくない!やめてやめてやめて___」

「お前が嫌だと言ってもしょうがないだろ?
もう決定事項なんだから。
お前はその腹の中の子供を産んで、母親になるんだ。
お前に拒否権なんかないんだよ、まだわかんねえ?」

「産まない!産まない産まない産まない!」

「恵。」

「誰だってそうよ、、、。
どんな女だって、あなたみたいな男の子供を産みたいと思うわけないじゃない。
いやよ、、、、。
なんで?なんでわたしが、、、あ、いや、、、あああ」

この時ほど自分が女に生まれたのを恨んだことはないと言わんばかりに女は泣いた。
女には、自分が女の性を持っている事がこの上なく疎ましかった。

「いや、、、こんなのもう、、、いや、、、、死にたい。生きてる意味なんかない。一生ここでこのままなら、、、このまま死にたい、、、もう、生きているのが嫌、、、もう、、、あ、あ、ああ、、、」

なぜ女が泣いているのか理解が出来ない。
人の気持ちなんて考えても見たことのなかった自分は、女のことも何一つ分かろうとはしなかったのだ。

「名前、、、考えたんだ。女の子なんだろ?
雫ってのはどうだ?城宮、、、雫。
なかなかいい名前だとは思わないか?」

「いや、、、いや、、、いや、、、。
消えてよ、、、あなたも、、、お腹の子も、、、消えてよ。
なかったことにしたい、ぜんぶ、、、、初めから。
もう苦しいのはいや、、、。
助けてよ、、、もう、、、助けて。誰かおねが、、、たすけて」

「誰が助けるんだ?誰も来ねえよ助けになんか。
お前は俺の妻で、、、これからもずっとそうなんだ。
俺が飽きるまでお前は黙って俺に抱かれてりゃいいんだよ。
お前に権限なんかねえの。
いい加減わかってもいいんじゃねえの?
あったまわるいなあ、お前は。」

女は震え続けた。
ひたすら首を振りながら。
もう、その頃から女は少しずつおかしくなっていたのかもしれない。
その目に光は宿っていなかった。
あるのは絶望の深い闇だけ。
自分を護るように抱きしめていた彼女の目はその時何を映し出していたのだろう。
この先の自分への深い深い絶望しか写していなかったのだろうか。
それすらも写してはなかったのだろうか。
今となってはもう分からない。



女は箍が外れたように泣いていた。
枯れることのない涙を流し続けて。
半狂乱になって泣きわめいた。

「雫ちゃん、、雫ちゃん、、、雫ちゃん」

女は血まみれになった少女を抱きしめながら、これでもかという程揺さぶり続け、、、泣き続けた。

「嘘よ。嘘、、、。嘘なんでしょう?目を開けてよ。目を開けて!!」

すぐさま警察に遺体は動かさないでと注意され、引き離されるが、女はただ首を振り、更に強く少女を抱きしめた。
まるでそうすれば少女が目を覚ますとでも言うように。
そうすれば少女が助かると本気で思い込んでいるようでもあった。

「いやあ!雫ちゃん!あ、ああ、この子だけ、、この子だけが、、私の、、、全てなのに、、、雫ちゃんだけが!雫ちゃんだけが!
私の命なんていらない、、、返して下さい、雫ちゃんを、返して、、、。
いい子なのよ!すごくいい子なの!あなたには分からないかも知れないけれど、この子は、、、この子は、、、お願いします、、返して、、、助けて、、、」

女はついに辻褄の合わないことを警察に言い出した。
数人ががりで女をやっと引き離す。
それを自分は、、、ただ黙って見ているしかなかった。
喉が焼けるような苦しさも、胸の軋みも、女を見ていると更に強くなった。
そして自分はただただ、少女に失望していた。
失望という表現は必ずしも正確なものではなかったが。
自分と女の__唯一の道標だった。
それがこんなにもあっさり、儚く散ってしまうなんて。
少女に目を向けるのは辛かったが、狂乱している女を見るのはもっと辛かった。
女を、少女をこんな目に遭わせたのは一体誰だ?
今まで悔しさという感情なんぞ殆ど持ち合わせていなかったのに、ただ苦しく、悔しい感情に襲われ、、次第にまともに息をすることも出来なくなっていった。
女を、少女をこんな目に遭わせた奴に、いつか必ず復讐する。
漠然とそう思ったのだ。
愛しているとそう自覚している女の涙がとてつもなく辛かった。
たとえ、女の方がほんの少しも自分を愛していなかったとしても。



何て自分はおろかだったのだろう、、、と。
今ならわかる。
彼女を愛していたからこそ及んだ狂行に。
「お母様はお父様を愛してなんかない。これまで一度だって」
先ほどつくしに言われた言葉がリフレインする。
まったくもって最もだ。
最も過ぎて、核心を突かれすぎたからこそ、、、自分は激昂したのだから。
彼女が自分を愛していないなんて。
随分前からとっくにわかっている。
そしてこの先も、、、彼女が自分を愛することはないだろう。
彼女の心をバラバラに壊した張本人が、そう願うことすら馬鹿なことだ。
ある日を境に、彼女は彼女では無くなった。
彼女は精神を病み、病院に定期的に入退院を繰り返さなければとても正常な思考をすることが出来ないほど弱った。
そして皮肉にも、、、その時初めて自分は気付いたのだ。
彼女を、愛してることに。
自覚してみれば、自分の今までの愚かさに言葉も出なかったが、彼女が永遠に自分を愛さないであろう事だけが、自分に与えられた唯一にして最大の罰なのだと思った。
ああ、自分は、彼女の、ひまわりのような笑顔を自分に向けて欲しかっただけなのだ。
今ならばわかる。
あの時の自分の気持ちも、、、彼女の気持ちも。
彼女に笑っていて欲しかった。
泣き顔なんぞ見せないで欲しかった。
笑っている顔を自分だけに見せてほしかった。
そうすれば自分は___自分たちは、何か変わっただろうか。
そう思うのはやはり言い訳に過ぎないとも思う。
そんなことはわかりきってるからこそ、、、これ程までに心が痛む。

貴之は自嘲気味に壊れたマグカップの破片を、独り過去の自分とその狂行と、、、彼女のあの時の泣き顔に、、、懺悔のように見つめ、飽くことなく、どこまでも苛まれていった。


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さとぴょん様(*^_^*)

コメントありがとうございます♪♪

さとぴょん様のコメント何度も読んでにやけてしまいました。笑
ギクリギクリギクリですw
さとぴょん様にはいつも核心をつかれて驚きっぱなしです笑
結婚、出産については貴之の脅迫が殆どを占めていると思います。
あとは恵のもうどうしようもない、、、という諦めのせいかな。
恐らく本編では描きませんが、貴之と恵。
この二人についてのエピソードというか、設定も結構作り込んでいまして。
まず、貴之は城宮財閥の正統な後継者で、前任の社長というのは、ごめんなさい、なんのひねりもないのですが、そのまま彼の実の父親です。w
そして恵もまた貴族階級の、根っからのお嬢様で、勿論それなりの名家出身でもあるのですが、資産的に見るとあまり力のない家で、、、城宮財閥にかかれば簡単に潰すことの出来る家の一つだったんです。
貴之は父親の名を使い、恵に対してはうま~くそこを利用したんですねえ。
出産に関しても、恐らくそうです。
私の中で貴之という人物は基本的に傲慢で人に対する思いやりにも欠けた、親の名で威張っている嫌な奴、で固まっちゃってますね。笑
年月が人を変えたのでしょうか、今は穏やかな一面もありますが。
彼という人物は私の中では道明寺司と西門総二郎を足して2で割った感じなんです。
遊び人の女たらしが恋愛感情も理解出来ないまま、恵を好きと自覚していないまま強引に彼女をものにしてしまったその結果、、、というイメージで書いています。

そうなんですよね!
結果として、望まない妊娠ではあったけれど、恵は雫を産みましたし、母親としての愛情は全力で彼女に注ぎました。
恵にとっては雫だけが心のよりどころで。
それだけにしずくを無くしたときの彼女の衝撃ははかり知れません。
一応貴之も持てる愛情は雫にすべて注いだ、といえば注いだのですが、、、。
娘に対してもあくまでも身代わりの愛情であったことには違いありませんね。
雫単体として見れば彼は恵ほどには確かに娘に対して愛情を持っていたわけではないと思いますが(←さいてー)笑

これからも更新頑張ります。いつもありがとうございます♪

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