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「ガラスの林檎たち」
第一章 誰にも言えない

ガラスの林檎たち 22

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「あれ、、、、いるの?・・・貴之さん。」

「、、、恵。」

うっかり過去の幻想に苛まれている自分に恵の足音が聞こえなかったのは迂闊だった。
全く、この女のことになると未だに自分は冷静を保てず、、、初めて会った頃から彼女に関しては調子が狂いっぱなしになる。
雫への対応だって、恵に関することがなければもっと別の方法があった。
自分が感情的に、なんてのは恥じ入って然るべき出来事だ。

「なにか、、言い合うような物音が聞こえたから、、、。
私、不安になっちゃって。あら、、、?」

床に粉々に散乱しているマグカップを見やると、恵がその視線をそのまま貴之に戻す。
貴之の方は少しばつが悪そうに恵を見つめ返した。

「やだ、、、どうしたのこれ?やっぱり、喧嘩、、、?
もしかして___」

「ああ、雫とちょっと、な。悪い、今ので起きた?」

「え、ええ。さすがにちょっと、気になって。
雫ちゃん___。
よかった、、、帰ってきてたのね。
私心配で心配で、なかなか寝付けなくて。
また、、、あの子に何かあったらと思うと、心臓か止まるかと__私、私は、、、。」

彼女は__恵は元来眠りが浅かった。
正確には貴之に軟禁されていたその時から。
深い眠りに陥るときには必ず以前のトラウマを掘り起こすような悪夢ばかりを夢見て。
それも彼女の精神を壊した一因だった。
夢に怯え、現実に戦慄き、彼女は逃げ場を無くしていたのだから。
だから今日も、雫がいつまで経っても帰ってこないことに錯乱状態に陥り__パニックになってとうとう睡眠導入剤のようなもので無理矢理眠らされたのにも関わらず、その眠りは浅く__かえって彼女の神経を過敏にさせていたのだ。

「心配するな。
あの子は__大丈夫だ。
あの子だけは絶対に大丈夫。
お前が心配することは何も無い、だろ?」

「うん、、、。ごめんなさい、さっきもあなたに、その__いろいろ心配かけちゃって。仕事中だったでしょう?私考えなしで、、、。
本当にごめんなさい。
__そうね、雫ちゃんは、高校生の女の子だものね。
自由に、、、させてあげなくちゃね。」

「俺はいいんだ。お前が気にする事じゃない。だから謝るな。」

「それ、口癖よね。」

「ん?」

「あなたって本当、、、いつもそうなんだから。
『俺はいいんだ』ってそればっかり。
あなたは時々私に優しすぎるし、甘すぎる。
もっと、怒ってもいいのよ?」

恵の言葉に、その言葉の裏の意味に、彼女自身は意識して言った言葉ではないだろうに、貴之は小さな痛みを覚えた。
悲しげに自分を窺う恵の視線に__やはりこれはある種の贖罪なのだと、、、そう思わずにはいられない。

「わたしは__あなたには何も出来ないのに。
いつもいつもあなたに迷惑かけて、あなたに甘えてばかりで、いつの間にか、それが当たり前な気がして__時々ね、自分が恥ずかしくなる。
このままあなたがいなければ、今でもそうだけど、殆ど何も出来なくなってしまう気がするの。」

「いいんだよ。お前は___それでいいんだ。」

「けど、これはやっぱり、、、自分で築き上げた幸せじゃないから。
あなたがその気になればすぐに手放さなければならない幸せだから、余計に怖くなる。
幸せだって、思う瞬間ほど怖くなるの。
そこから落ちていくのが__怖い。」

どうすればいいだろう___と貴之は思う。
涙を湛えていう彼女を、自分は抱きしめてあげることも出来やしないのだ。
頼りなげに目を潤ませ、身体を震わせる彼女に後悔という自責の念が押し寄せる。
過去の罪は、決して自分を解放してはくれない。
これから先もずっと、永遠に。

「本当に、あなたには感謝しかないのに。
いつも私は__私は、、、あなたには、何にも出来ない。
すごく惨めに見える。自分の事が。」

「恵、もういい。」

「だから、だからね。
私の、方からも、、、、。」

目を瞬かせ、決意を固めたように貴之を見上げる。
彼の方には相当疑問符が浮かんでいたが構わず恵は彼の手を引き寄せた。
そのまま彼の胸板に押しつけるように身体を預ける。

「抱き、しめてくれる、、、?」

「お前、急に、、、どうしたんだよ。」

「急じゃない、、、急なんかじゃないわ!
お願いよ、、。早く、して。抱きしめて、ほしいの。」

彼女の足は既に震えていた。
ガクガクガクと音がしそうなくらい。
何かに怯え、目はぎゅっと閉じたままだ。

「お願い、、、ちゃんと、ちゃんと抱きしめて。」

彼女の震える足に、怯える顔に、彼はなにもいわずに、、、黙って彼女に従った。
怖がらないように、出来る限りそっと腕を回して、そのまま抱きしめる。
か細い彼女の身体を潰してしまわないように、優しく。

「あ、、、、あ、、、、あああ、、、あ、、」

やがて、彼女から掠れたような叫び声が聞こえ始める。

「あ、、、はぁ、、、あああ、は、あ、あああっ」

とうとう耐えきれずに彼女は叫び出す。
その目は恐怖に満ちあふれ、全身で貴之を___拒否していた。

「あ、、や、やあ、、やめないで。貴之さん、、、。お、お願い、、、。抱きしめてて、、、!」

もうやめないか、とは言えない。
彼女にそれだけの負い目があるからこそ__図々しくも自分からそう言って、彼女の自尊心を傷つけるような真似は出来ない。
彼女の気が済むまで、、、自分は耐えなければならない。
自分が愛し、その果てに壊してしまった女性のことを、直視することを。

「あ、、、、い、いや、、、、あ、、、、は、、、はあ、、、ああ、、、、あ、、あ、、、」

だんだんと呼吸をすることすらままならなくなる。
掠れるような息が漏れるとともに、彼女の呼吸が瞬間荒くなっていくのを感じていた。
いつもの___過呼吸に陥る前の前兆だ。

「や、あ、、、。は、あ、、、やあああああ」

彼女の状態は酷くなる一方で。
怯える彼女の顔に、自分の過去の狂行をそのまま返されている気すらした。
自分に抱かれているというだけで、今にも死んでしまいそうな顔をしている彼女をただ見つめながら抜け出せない罪悪に捕らわれていく。
とうとう限界に達しそうな彼女に手を離そうか迷いあぐね、彼が彼女の背中をさすった、その刹那。

「あ、や、やああああああああああああああああああっっ」

この世のものとも言えない絶叫が響き渡る。
恵は遂に足の力も抜けたようでその場にしゃがみ込んで、自分を抱きしめた。
ふるえながら、首を横に振りながら、自分の身を守ろうと、、、躍起になっているのが、貴之には見て取れる。

「あ、あああああ、、、ああ、、、、。」

首を振りながら、彼女は静かに涙を流す。
荒い呼吸はそのままに、息をするのでさえ精一杯の様子だった。
ガタガタと震える身体に、胸が痛んだ。

「ごめ、、、なさ、、、、貴之さん、、、やっぱり無理、みたい、、
ほ、ほんとに、、、ごめんなさ、、、」

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さとぴょん様(*^_^*)

そうですね、確かに過去の貴之とは思えないくらいに恵に対しても雫に対しても基本的には優しいですよね。
やはり恵と、手放しで幸せだった、、、とは言えないにしろ一緒に過ごしてきた10何年の月日のたまものでしょうかねえ。笑

はい、その部分は疑問に思った方も多いと思うので、今日更新した23話で明らかになっていると思います。
トラウマ、特に性に関するトラウマというのは一生ものだと思うので、、、そこは外せない描写かなあとは思ってます。
頑張って仕上げました。
23話、ぜひお楽しみ頂けたら幸いです♪笑
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