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「ガラスの林檎たち」
第一章 誰にも言えない

ガラスの林檎たち 28

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____やっぱり考えてみたところで、どうしようもないことかな、、、

洗面台で髪を乾かしながら、結論の出ない答えに終止符を打つ。
話の流れ的に、道明寺司の元カノは恐らく間違いなく、、、自分だ。
施設にいた、あんなに貧しい漁村で独りぼっちだった自分に、絶対に関わりのない人物だと否定すればするほどに、辻褄の合うことの方が多い。
田舎の漁村で交通事故に遭い、家族を失い、その衝撃のせいかそれ以前の記憶までもを失い、そして児童養護施設へと連れて行かれたときに、唯一手元にあったのはどう見ても分不相応な土星を象ったネックレスに、英徳学園高校の制服、そのポケットに入っていた生徒手帳と学生証。
自分のことについてもわかっていたことと言えば、学生証からわかる『牧野つくし』という名前に17歳という年齢、恐らくは英徳学園に在籍していたということだけだった。
自分がそうだったように周りの見解もまた似たようなもので。
それでも、あんな田舎の貧しい村で、両親という後ろ盾を失い、勿論引き取って面倒を見る物好きな大人は現れずに、施設に入れられた。
それまでの自分がどう生きていたかを考える暇もなく、また、どう生きてきたかも関係なく、ただ周りの人間に流されるままに施設に入り、居心地の悪いその場所から逃げたり連れ戻されたりを繰り返し、そして、、、貴之に拾われた。

___道明寺、司、、、か、、、

彼は自分を、本当の意味で知っている人だろうか?
知っている人だとして信じていい人なのだろうか?

過去を振り返らない。
自分が何者かだなんてどうでもいい。
それが現在の何にも影響を及ばさないのだとしたらそんなのはどうでもいいと、、、ずっとそう思って生きてきたのに。
いざとなって過去の自分を、、、自分が殺した『牧野つくし』という人物を捜し求め、見つけてくれようとする人物が現れるとは。

___いまさら、、、どうでもいいこと、なのかな。私にとっては、ここは、やっと見つけた自分だけの場所だもの。それでいいじゃない。

軽く溜息を吐いてバスルームを後にすれば、コンコンとノックの音が聞こえ、恭しくキヨが姿を現した。

「お嬢様、、、旦那様と奥様がお戻りになりました。」

「え、、、あ、、そうですか。」

「ええ。旦那様がお嬢様を書斎に呼ぶようにと、、、。」

「、、、はい。今すぐに行きますと伝えて下さい」

キヨがもう一度深々と頭を下げて部屋を後にする。
つくしの方はとても浮かれた気分だと言えるような精神状態ではいられなかったが、ひとまず司の事は頭から振り払い、書斎へと向かった。









「え、、、?あの、、、お父様、、、今の、、、は、、、」

今し方、目の前の男から言い渡されたことが信じられずに、彼に向き直る。
どうしても彼の言うことを理解することが出来ない。
一ヶ月前の諍いがあったことなど、歯牙にも掛けないのか、自分が書斎に入るなり存在を確かめるようにきつく抱きしめられ、口内を嬲られ、息も絶え絶えの自分をソファにもたれさせながら、彼は信じられないことを口走ったのだ。

「どういう、、、意味がわからないわ。私、私が、、、何をするって、、、?」

「簡単なことだ。
お前が奪うんだよ、あの男から。道明寺司から。
地位も、名声も、彼の心さえも、何もかも奪って、ズタズタに引き裂いて捨てろと言ったんだ」

何かの冗談かと彼を見つめ直すが、むしろ狂気に満ちあふれたようなその瞳にゾッとしたものを感じてすぐに逸らした。
たまらず聞き直す。

「私が奪うって、、、どうしてそんな、、、そんなこと出来るはずないじゃない。理屈で考えてよ。私があの人をどうこうできるほどの力を持っているとでもいうつもりなの?
一体何をどうしたらそんなことが、、、
お父様は帰国されたばかりで疲れてるんだわ。
変なこと言わないで、早く寝て下さい。
朝になったらきっと忘れてることです。」

「いや、お前なら出来る」

口の端だけを上げて、貴之が冷笑する。
何とも言い難い、残忍な笑みだった。

「お前なら出来るんだよ。」

「あの、、、、話が、、、読めないです。お父様は私に何を仰ってるのかも、、、」

「正確には『牧野つくし』だからこそ出来ることだ。」

「牧野つくし、だから、、、?」

「ああ、この一ヶ月お前の言ってたことが嫌に引っかかってな。
つまりお前が道明寺のパーティーで、、、あー『牧野』という名を彼の口から耳にしたとか。」

「、、、え、ええ」

「気になることはどんなに細かいことでも徹底的に調べ上げるのはビジネスの基本だ。
調べたよ、徹底的に。
牧野つくしが道明寺のお坊ちゃんとどんな関わりがあったか、、、
お前を施設から引き取るときにも勿論お前の経歴も素性も調べ上げたが、あくまでもそれはただの履歴で、、、正直牧野つくしがこれまでどんな人生を送ってきたかに興味はなかった、だが、、、」

「つくしが、道明寺司の元カノだったって、、、それに辿り着いたってこと?」

つくしに話の先を当てられたのが意外だったのか、貴之が眉を潜めて彼女を見る。

「偶然だけど、、、私も今日知ってしまったの、そのこと。
殆ど道明寺さん本人から聞いたことだけど、、、でも彼は私がつくしだとは気付いていないはずだわ」

「、、、、そうか。いや、、、彼が知ってしまっても構わないことだが、、、こいつは思わぬ収穫だったな」

「それで、、、?まだ私にはお父様の仰っていることが、、、」

「だから簡単なことだと言っただろう?
お前が道明寺の坊ちゃんを、、、好きにさせればいい。
お前に惚れさせるんだ。
彼の心が壊れるほどに支配して、虜にして、そして本当に壊してしまうんだよ。」

「でも、、、たかが元カノに似てるからって、、、」

「調査書の報告によると、司君はつくしに首ったけだったそうだ。
彼女のために道明寺家を捨てる決心をしたほどに、、、と報告書にはそう書かれていた。
当時の英徳の生徒の何人かにも証言を取らせた。
それから、、、つくしに彼が捨てられた後の彼の荒廃ぶりも」

「、、、でも、、、まさか、、、5年も経っているのに、、、今更___」

「彼の方に未練が残っていなかったとしても、かつてそれ程までに心を揺さぶられた女性だ。
心に動揺を見せないはずはない。
いや、、、彼の心を弄んでどうこうは正直ただのオプションで、そうなれば儲けものというだけで別に必ずしもそうしないといけないわけではないが」

「じゃあ、、、?」

「とりあえずは、、、お前が彼に近づける場を用意する。
その気になれば、彼の心のほころびを少しでもつつけば、彼を今居る場所から陥落させることなど簡単だ。
お前が彼の居場所を奪って、、、徹底的に貶めるんだ。
出来れば彼を心底好きにさせて、ボロボロにしてから捨ててくれれば、こんなにでかいオプションはないけどな」

まだ貴之の真意が読めないつくしが首を傾げながら問いかける。

「私は、、、お父様の仰ることなら何でもします。
それだけの恩義もあるし、お父様のやれと言うことならたとえ犯罪まがいのことだとしても、厭いません。」

「はっ、、、そいつは頼もしい」

「でも、、、聞かせて下さい。
月並みな質問かも知れませんが、、、お父様には道明寺さんに個人的な恨みというか、確執でも?そうまでして__そんなあやふやな賭けのようなものまでして__彼を陥れたい理由は何なの?」

このつくしの質問には一瞬答えるかを迷いあぐねた貴之だったが、真っ直ぐにつくしを見据え、静かに答えた。

「お前には、、、そうだな、一度も話したことはなかったが、、、雫は___お前じゃなくて俺の本当の娘の方の雫だが___道明寺司に、殺されたんだ」


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