「ガラスの林檎たち」
第二章 わたしを離さないで

ガラスの林檎たち 32

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「、、、で、どうなんだ?最近司君とは。」

「順調、、、だと思うけど」

珍しく日付を超える前に帰宅した貴之に書斎に来るように命じられたつくしが最近の司の動向について報告する。
再び病院に入院した恵の為に殆ど会社と病院の往復を繰り返す貴之の顔には疲労が色濃く刻まれていて、、、またしても彼にこんな顔をさせる恵への憤りだけが募る。
あんな女、死んでしまえばいいとも本気で思うが、同時にあの人が死んでしまったら目の前にいるこの男も生きてはいられないだろう、と容易に想像がつく。
それだけ貴之にとっては恵の存在は人生そのもので___だからこそ苛つきは増すばかり。

「そうか。ならいい。お前も今日は疲れただろう。寝なさい」

また今日も、、、抱いてくれないのかな。
貴之に対しては他の男に対するようには積極的に出来ないつくしにとって、毎度彼から誘われることを期待しては突き放されるように言われるその言葉に少なからず胸が痛む。

「、、、ねえ、お父様。一つ聞いてもいい?」

「、、、ん」

「、、、司君って、、、そんなに悪い人、なの?」

途端に、貴之が少し目を細めてつくしを見やる。
その目が何を言ってるんだと怒っているような気すらして、ちょっと視線を逸らしてしまった。

「その、、、つまり、お父様が言うような、全校生徒を使って人を虐めたりとか、そんな残虐なことするような人には見えなくて。
なんだかヘンに冷めたところもあるし、子供じみた遊びなんかするような、、、そんな人には見えないわ」

「好きな女の前なら、どうとでも振る舞えるだろう。
一応彼もビジネスの世界で生きている人間だ。
お前みたいな小娘を騙す事なんて、彼にとっては朝飯前。
そうだろう?」

「でもわたしには_____」

「お前は俺の言うことと、彼の振る舞いのどっちを信じるんだ?」

何でも無い風を装ったが、その口調には静かな怒りが隠れていた。
これ以上刺激するのは不味いかも、と話の転換を試みてみる。

「、、、勿論、お父様よ。
でも、、、彼って、雫の___お父様の本当の娘の方の雫を___虐めていた件には直接関係がないって言ってたわよね?
それなのに、復讐の対象者は彼だけなんて、、、ちょっとだけ可哀想、、、っていうか」

「、、、彼に直接関係が無かったら、それが何だって言うんだ?
現に彼があの残酷なゲームを始め、定着させ、校内の空気すらそれを公式のものとさせた。
それだけで、理由は十分だろ?」

「、、、、、ん、そう、、、そうよね。わかったわ」

有無を言わせない貴之の口調につくしが渋々認める。

「まさか、彼に情でも?」

「、、、そんなこと、ないけど」

「それならお前にとってはどうでもいいことだ。
彼に対して、妙な感情は持つなよ。
これはお前の為に言ってる。
変に馴れ合われても、後が面倒だ」

生まれてからお父様以外の男に妙な感情なんて持ったことないわ___そう言ってしまえればどれだけ楽だろう。
最もそんなことを言う勇気はつくしには持ち合わせていなかった。

「あんなヘタレにそんな感情、持つわけない。絶対有り得ないから、そんなこと」

「はは、ヘタレか。好きな女に、散々な言われ方だな、彼も」

貴之はちょっと笑って、つくしの肩を抱き寄せる。

「、、、このまま、上手くやれ。しくじるんじゃないぞ」

「、、、、、はい」

久しぶりの貴之の腕の中。
それだけで舞い上がってしまいそうな自身を抑えて、彼の肩に頭を乗せてみた。
彼に接すると何もしらない子どものような自分が顔をのぞかせるのだから、本当にやってられない。

「、、、私、がんばるから。お父様のために、絶対に成功させてみせる」











カタカタカタと、小気味よくキーボードを打つ音が聞こえる。
手持ちぶさたのつくしは、昨夜睡眠時間をけずって作成したレポートのせいで強烈な睡魔が襲ってた。

「、、、おい、雫。俺に雑用だけやらせて、寝るんじゃねえよ。起きろ」

「ええ~、、、昨日全然寝てないんだもん、、、。ちょっとくらいいいじゃん」

久しぶりにメープルでもなく司の邸での逢瀬。
論文の英訳は司にやらせて、脳天気にソファーで寝こけるつくしに苦言を漏らす。

「ほら、司君、英訳とか好きでしょ?好きそうな顔してるもん」

「英訳が好きそうな顔ってどんなだよ。
つか、まじで起きろ。、、、一応出来たから確認しろよ」

「パスパス。英語とか一番苦手な教科だし~。確認してもわかんないって」

「お前、学校の成績はいいんじゃねえの?」

「ん~。なぜかね、英語以外の教科は勉強しなくても出来るんだけど、英語だけは苦手で。」

「あっそ」

A4用紙で5枚ほどの論文を印刷し終えた司が、おもむろにつくしの寝ているソファーに腰を下ろす。

「課題も終わったことだし、やらせて」

「今日生理だから、無理」

「、、、はあ?じゃあお前ほんとに俺に雑用させにうちまで来たのか?」

「そんなに怒んないでよ、、、。
口でならしてあげるけど?」

機嫌を取るように司に視線を合わせる。
しばらく迷いあぐねていた彼だったが、盛大な溜息を吐いて、否定の意を示した。

「、、、やめとく。それだけじゃ止まらなくなりそうだし」

「、、、じゃあ、遠慮無く寝ます」

もぞもぞと体勢を変えて、司の膝に頭を乗せたつくしがだるそうに言った。

「、、、ちょっと経ったら起こしてやるから、たまには外でデートでもしねえ?」




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さとぴょん様(*^_^*)♪

うちのつくしちゃんは愛さずには~もガラスの~も特殊な一面を持っているので、確かにそうかもです。笑
司君もほとんどチェリーに近いので、余計に対比が目立ちますねw
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