「ガラスの林檎たち」
第二章 わたしを離さないで

ガラスの林檎たち 40

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「亜門、、、」

「、、、ん?」

「痛い、離して」

自分でも気がつかないうちに力が入ってたのか、胸に抱かれた彼女は少し苦しそうに身を捩らせた。
いつもは大抵されるがままの彼女が自分に抗議なんて、初めてキスの仕方を教えたとき以来ではないだろうか。

「お前、ムードを考えろよな。ムードを」

「ムード?」

「空気読めってことだよ」

言われてることの意味をまだ真剣に考えているらしいつくしを、今度はそっと、やさしく抱きしめた。
すると、今度はつくしも抱きしめ返し、おまけに触れるか触れないか程度のキスを落とした。

「、、、空気、読めた、、、?」

まだ表情にはわかりにくいところもあるけど、恐らくは悪戯っぽい微笑みを自分に向けているであろう彼女のことが、愛おしい。
手放したくない、ずっと傍にいさせてやりたい___なんて、センチメンタルな考えまで思い浮かび、これじゃあミイラ取りがミイラってやつじゃねえ?と自制する。
自分の元に縛り付けておきたいわけではない。
彼女を雁字搦めにしたいわけでもない。
束縛された彼女には、正直自分は何の魅力も感じないとも思う。
気まぐれで、わがままで、誰の言うことも聞かない、先のことなど考えない。
大事なことは今この時をまともに生きられるかどうか。
自分が彼女を気に入ったのは、もしかしたら孤独の中でも自由奔放に生きているそのアンバランスさだったのかもしれないのだから。

「まあ、、、合格じゃね?」

そう言うと、彼女はまたちょっと笑って、目を瞑る。
本当に眠くなってきたのか、身体も完全に亜門に預けた状態だった。

「でもそっか、、、俺とお前のこの仲も、期間限定ってことか。
あと一ヶ月はかかんねえだろ?金貯めんのに」

微睡んで、もう少しで寝落ちしそうだったつくしが、彼女自身驚くほど急速に目が覚めた。

「____キ、カン、、、、、ゲン、テイ、、、、、?」

一瞬頭が真っ白になって、全ての音が彼女の脳裏から消失した。
そのうちに、頭を内部からハンマーで殴られたような痛みが続き、あまりの苦痛に顔を顰める。
、、、不意に空っぽになった脳内に色のついたイメージが映し出される。
痛みはいつの間にか消えてて、ぼそぼそとノイズが木霊した。

___俺とつきあって10足していこうぜ
___たせない場合は?
___それでもいいなんていうつもりはねーよ
___期間限定?
___返事は朝7時
___え!?朝ってもう3時間しかないよ!?
___3時間もあるだろ

頭の中で自分の声と、知らない誰か男の人の声がした。
映像はぼやけていて、何が何だかわからずに、、、ただひたすらに気持ち悪さが込み上げる。

___つくしちゃん、、、○○○と付き合い始めたってほんと!!?
___嘘よね、嘘でしょ?あんた前みたいに嘘ついてんでしょ?
___もうちょっと楽しそうな顔できねえ?
___ごめん
___謝んなよ、いーけどべつに
___あたし、あんたとつきあってみる
___二ヶ月間、ちゃんと向きあってみる、自分とあんたに
___よろしくっ
___もしもーし、聞こえる
___聞こえた

「やだ、、、ナニ、、、コレ、、、や、、、だ、、、」

映像はぼやけたまま、ただ吐き気だけが強くなっていく。

「つくし、、、?、、、どうした?」

異変を感じ取ってか、亜門がつくしに問う。
彼女の方はどんどん顔面蒼白になっていき、とてもではないがまともに返すことができなかった。

___話があるの、あたし、もうあんたとはつきあえない

そう、、、自分は闇の中に居た。
ザアザアと耳障りな雨が降っている夜の闇の中に。
彼に、こんな時じゃないと言えない。
全てを隠してくれている雨の中にいないと、言えない。
彼って、誰のこと?
私は何を伝えようとしているの?
考えるまもなく、答えは頭の中で勝手に形作られていく。

___なに言ってんだ、お前
___あんたの家も今日出てく
___なんでそうなるんだよ、お前の言う守られるのが嫌だっていうのは、俺と切れるために言ったことなのかよ
___ちが・・・ちがうよ あたしはあのとき本気で○○○と向き合うために
___じゃあなんだよ、言えよなんでこうなるんだよっ そんなこと急に言われて納得出来るか!?
___○○○のお母さんが別れなきゃ○○くんと○○の父親をクビにするって、、、

「やっ、、、だっ、あ、、、!こ、、、怖い、、、ナニコレ、消えて、、、、消えてよっ!」

「おい、つくしっ!しっかりしろ、いきなりどうしたってんだよ」

頭を抱え込んで嗚咽を漏らし始めたつくしを抱きしめながら、亜門が問うた。
つくしはつくしで必死の想いで亜門にしがみついて、彼の体温を確かめた。
本能的に落ち着く場所を探していたのかも知れない。
キリキリと痛みを増していく頭痛に反比例して、亜門に抱きしめられていると、体温もいくらか上がって、ホッとしてきた。
彼がさすってくれる腕の温かさと優しさに、、、つくしは放心状態のまま亜門を見つめ直した。

「あっ、、、もん、、、あもんっ、、、あもん、、、」

知らぬ間に自分の頬には幾筋もの涙が伝っていて。
悲しい、とか、辛い、とか。
そんな感情は追いついてこないままただ生理的な涙を流していた。
幸せな恋人同士の映像と、同じカップルの修羅場が暗転と明転を繰り返し、つくしの脳内を駆け巡る。
いつの間にか消えていた頭の痛みと共に、つくしは静かに気を失い、それでも無意識のうちに亜門の身体に縋り付いていた。




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さとぴょん様♡

あけましておめでとうございます♡
コメント遅くなってしまってごめんなさい(´;ω;`)
年末年始体調悪くなってしまって、勝手に更新をスキップしてしまいました。
自己管理大切ですねえ(´;ω;`)

そうなんですよね。
記憶を失ったつくしの唯一の心の拠り所、亜門。
彼がいなければつくしはもしかしたらもっと悲惨な状況に陥ってたかもしれませんね、、、

ゾクゾクしてくださったということで♪
光栄な気持ちでいっぱいです。
わたしも記憶喪失になったことはないので、あくまでも想像でしか書けないのですが、すべてを忘れてまっさらになって、記憶の一部分のみがふりかかってくるというのは恐ろしいことだと思います。
つくしちゃんひとりだったら壊れてしまうくらいには。

亜門×つくしも大詰めです。
次の次くらいで二人の関係は終了、かな?と思いながら書いています。
早くつかつくに戻りたい!けれど貴之&恵との出会いも残ってるし、、頭パンク状態です(*_*)
貴之と恵のanotherストーリーもとても書いてみたいなあなとと余計なことまで考えている今日このごろです(笑)

次回は来週の月曜日の更新です!
お楽しみに♡

asuhana様♡

こんばんは♡
あけましておめでとうございますo(^▽^)o
年末年始体調崩してしまいコメ返遅れてしまって申し訳ないです(´;ω;`)

不確かで拠り所のない、、、まさに今のつくしを一言で表したフレーズですよね。
亜門×つくしも大詰めです。
次回かその次で亜門の出番は終了かな?と思っております。
来週の月曜日の更新楽しみにしててください。

今年もよろしくお願いします♡
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