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「ガラスの林檎たち」
第二章 わたしを離さないで

ガラスの林檎たち 43

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それから何日か、、、ううん、何週間か経って、目標金額の百万円を達成した私は、亜門のアパートから身一つで飛び出した。
殆ど逃亡に近いかも。
彼に残した物と言えば、ありがとう、とお礼を書いたメモとその横に合い鍵を置いていった程度。
なんだか彼とは長い時間を共有したような気になっていたけれど、そんなこともなくて、実際に一緒にいた時間は振り返ってみれば驚くほど短かった。
今から考えれば、散々食べさせてもらって、生き方も教えてもらって、なんて恩知らずなクソガキだったのだろうとも思うけれど、あの時の私には彼のことを思っている余裕も無かったし、金が貯まったからさっさと引き上げるだけ、なんてそんな単純な感情しか持ち合わせていなかったのだ。
あれだけ世話になって、面倒を見てくれた人にたいしてだって、つまるところ私は関心が持てなかったのだ。
人というものに、大人に、まるで関心が持てなかった。

お腹が空いたから、ご飯を食べる。

眠たいから好きなときに寝る。

気持ちいいからセックスをして、ついでに金をもらう。

あの頃の私は、複雑なこと何て考える暇がなくて、ただ感情の赴くままに生きて、自分以外の他人はわりとどうでもよくて。
底辺を彷徨っていた私を引き上げてくれた亜門は多少なりとも、、、当時の私なりに、だけど、好意を寄せていたのかも知れないが、それでも所詮、彼も私にとっては『自分を金で買った薄汚い大人』の一人だったのかもしれなかった。
そのあとも、私は自分の生活で精一杯で、次第に彼の事は頭から離れてしまっていたし、身体を重ね合わせるのも彼に似たタイプの人が多かったから、彼の顔すら朧気になってしまっていて、、、彼__亜門のことを思えば思うほど、私にとっての彼とはどんな存在だったのだろうと思う。
彼にとっての私の存在も。
今となっては、もうわかりえないことなのだけれど。
そんな生活が何ヶ月も続くはず無くて、、、しばらくして売春の疑いありって言われて、警察に連れてかれて、ひどく叱られたのを覚えている。
自分を高く買ってくれそうな人を見つけるのは得意だったけれど、まさかそれがたまたま生活安全課のお巡りさんだったなんて、マジで笑えない。
補導されて、人生舐めたクソガキだのなんだのと死ぬほど罵られたけれど、私の方からは一切なにも発しなかったから、おまわりさんはおまわりさんで手を焼いていたみたいだった。
ウンともスンとも言わないし、身元もわからないから、そのまま近くの児相で2、3日預けられて、結局は元いた施設に戻っただけだった。
何度も脱走を繰り返していた問題児の私が施設で歓迎されるはずもなくて___戻ってきたときにあからさまに嫌な顔をされたのは笑ったけど___まあ、ここにいるのもほんの僅か、どうせ18歳になったら出て行かなきゃならないんだし、それまでは大人しくしておいてやろうとは思っていたから、まさか、、、こんな私を養女にしたいなんて大人が現れるなんて思っても見なかった。
確か、、、18歳になる誕生日のちょうど一ヶ月前だった。
お父様、、、城宮貴之が私を見つけてくれたのは。
もっと正確に言えば、見つけてくれたのは、お母様の方なんだけど。










施設に来た夫婦は、まだどちらも若く、そして誰の目にも明らかに裕福そうに見えた。
特に女の方は、、、これは今でも鮮明に覚えていることだけど、今まで見た誰よりも綺麗な顔貌をしていて、年齢不詳の幼さを纏っていて、常に隣の旦那さんに優しく庇護されている、幸せそうな女そのものだった。
花のように笑う人。
その、常人には出せない目映いばかりのオーラすら、つくしにとっては吐き気が込み上げた。
だから、つくしは、その女のことが一目見たときから大嫌いだった。
自分とは対極の人生を幸せに歩んできたであろうその女ことが、生理的に受け付けなかったのだ。
彼女を見ていると、自分がまるで汚らしい、汚物に感じて、、、今まで他人のことなどどうでもいい、そんなことを考えもしないで生きていた自分だったのに、何故か自分が恥ずかしくなる。
だから、きっと想像もしていなかった。
恵がその時何を考え、どんなことを想いながら自分の方を見ていたのか。
その視線の意味すら、自分に何らかの関わりがある物とはとても思えなかったから。
実際、施設の子どもを引き取りたいと、里親を申請する大人たちは月に何度か来ていたが、大抵幼稚園、大きくても小学校の子までで、自分を引き取って面倒を見たいなんて言う大人もいるとは考えられなかったから、余計に、、、この、まさにテンプレ通りの幸せそうな夫婦が自分なんかを引き取りたいと申し出ようとは、、、当時の自分にしてみても、そこまで図々しい考えを思い浮かべたことはなかった。

「雫ちゃん」

最初に城宮雫と名付けたのは、間違いなく恵だった。
最初は誰のことを言っているのかまるでわからず、、、それでも視線は真っ直ぐに自分の方を向いていたから、恐怖の感情すら抱いて彼女を恐る恐る覗き込んだ。

「雫ちゃん」

恵はもう一度、その名を呼んで、自分の方へと手を伸ばしてきて、、、その差し出された手に、なんの考えもなしに思わずバッと振り払ってしまった。

____何、この人。すごく、やだ。

つくしが彼女に対する苦手意識を捻出した瞬間でもあった。
そう、、、美しくて、上品で、誰が見てもそうとはおもわないだろうけど、つくしは、彼女の事を激しく嫌悪していた。
気持ち悪かったのだ。
美しいだけ、それと同じくらい薄気味の悪い存在。
懲りずに自分を抱きしめようとする手を「いやっ!」と叫んで、思い切り振り払ってしまった。
恵のスイッチは、ここら辺で入ってしまったのだろうと思う。
無理矢理彼女の方を向かせて、肩を掴まれて、すごい勢いで揺さぶられた。

____まだ、ママのこと怒っているの?、、、ねえ雫ちゃん

遂には恵は泣き出してしまって、ガクガクと力の限り揺すぶられながら、雫ちゃん、雫ちゃん、雫ちゃん、、、そう叫ばれた。

____どうして私を見ないのっ!私を見て、私を見なさいっ!!雫ちゃん、、、雫ちゃん、、、、お願いよ、、、私の方を見て、、、

訳の分からない事をいう女が般若のようで、薄気味悪くて、気持ち悪くて。
もしかしたら自分はこの時初めて___ある意味では___自分以外の人間に関心を持ったのかも知れない。
それは決して彼女にとってはいい感情では無かったが。
怖い物なんかなにもない。
失う物なんか何も無い。
そう思っていた自分にとって初めて出来た『怖い』もの。
みっともないけど、恵の存在が怖くて、肩が震えて、、、そのまま何も見まいと膝に顔を埋めて、自分を守るために抱きしめていた。
施設長、、、だったかな。
躍起になって自分から恵を引き離そうとして。
それをよそに、、、その女の、恐らくは夫だと思われる人に、名を呼ばれた。

「___雫」

またしても、雫、と呼ばれた。

「___雫」

無視して顔を埋めっぱなしにしていたら、再び名前を呼ばれて、恐る恐る顔を上げる。
この時、直感的に、、、自分の感情が追いつく前に思った。
今考えれば、それはちょうど亜門と初めて出会ったときに感じた感情。
理屈より先に、彼と顔を合わせる前に、雫と呼ばれた声だけで、直感したのだ。
この人は、私の人生をきっと、マシなものにしてくれる。
今居るこの場所から引き上げてくれる。
亜門に感じたときよりずっと強烈で、、、その想いはいつまでも自分の胸に巣くい続けた。



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asuhana様♡

そんなこと言っていただけて嬉しすぎ問題♡
明日更新の44話も楽しんでくださいねっ!

わたしも恵と貴之の関係性は倒錯めいてて好きです(笑)(´⊙ω⊙`)

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さとぴょん様♡

コメントありがとうございます♡
そうなんです、ついに、亜門×つくし編終了です。
ここまでつくしを人間らしく育ててくれた亜門には感謝ですね。
最後にありがとう、が伝えられるような人間ではなかったですからね。笑
恵とつくしはとことん相性が悪いですよ〜!
冒頭に出てきた二人の関係以上に最初のうちは二人の仲は険悪なんです実は。
それは多分、恵はどこかで雫を亡くしてしまったことに気づいていて、無意識のうちにつくしを雫と思い込もうとするからこそ、彼女にとってはどこか違和感を感じてイライラが募り、、、という感じなんでしょうが、、、。


この時完全に壊れてます!そこはキッパリ。
それでもまだ雫は生きていると思い込もうとしている恵のために貴之が養護施設に連れていきました。
その出会いはつくしにとってよかったのかどうか、、、(´;ω;`)


貴之は正気です。
ただ恵に合わせているというだけですかね。
彼も恵一筋人間なんで、恵にはとことん甘いのです(笑)
つくしにしてみればたまったもんじゃないでしょうが。

明日の更新は2話連続です。
楽しんでくださいね♪
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