短編
12月31日
『右肩』の続編となっています。
まだ読んでいない方はそちらからどうぞ^^
12月31日を聴いてから二時間で書き上げました。
楽しんで下さいね♪
去年のことを思い出す度、溢れ出して止まらなくなる涙がある。
あの大晦日。
小さな部屋に、ひとりぼっち。
ふったのか、ふられたのか。
結局恋の終わりを決めたのはどちらだったのかわからないまま、ただ機械的に物を食べて。仕事をして。睡眠をとって。
仕事納めを迎えて、そういえばもう年末なんだ、と。
彼のいない季節たちは、どうしてこうも早く過ぎ去って、そして自分の中に何も残さないのだろう。
どこから聞きつけたのか、私に彼氏、、、というより、不倫相手?
彼と別れてから、何人か声をかけてくれた男の人もいたけれど。
友達としてでも構わない、そう言って、なかなか引き下がってくれない人もいたけれど。
私にはそんな気力はどこにも残っていなかった。
自分はつまるところ空っぽで、空っぽなままでも人間って生きていけるのだと感心してしまったりするくらいに、空虚だった。
恋の傷は恋でしか癒せない、というけれど、そんなの迷信だった。
恋愛は今の自分にとってひどく面倒なもので、そして、、、何より男性のことをもう信じることができない。
信じようと思えるほど時間をかけて誰かに向きあうつもりもない。
最後には疲れて、面倒になって、はい終わり。
自分で挫折してしまった彼との恋を返す度に、男女の仲とは所詮そんなもんだと、どこかで警告する自分がいたりもして。
ちょっと疲れてんのかなって、自分に呆れる。
年末だからってとてもじゃないけど、あの実家に帰る気力は残っていなかったし、仲良くしてくれてる友達は大晦日も仕事していて、忙しそうで。
一人寂しく、コンビニでおでんを買って、紅白を見てた。
テレビから、明るい恋愛ソングが流れる。
大勢の若いアイドルたちが歌っている。踊っている。
そんな何でもない、年末の一場面。
楽しそうに歌う女の子たちがファンの声援に応えるように、ジャンプして、ターンして。
そう、なんでもない場面の筈だった。
本当に何でも無い場面で、自分にはほんの少しも関係のないその子たちの笑顔があまりにも純粋で、楽しそうで。
不意に涙が溢れ出して、止まらなくなった。
彼と別れたその日に、多分一生分泣いて。
もう泣かないと決めていたのに。
頭を占めるのはたった一つのことだけだった。
彼に、会いたい。
私はどうしてここにいるのだろう。
こんな大晦日に、一人で、どうしてこんなに胸が苦しくなってくるのだろう。
涙が次から次へと頬を伝って、止まらなくて。
その涙の温もりに、ホッとしている自分も居て。
もっと泣けば良かった。
ううん、もっと笑えば良かったのかな。
彼に最後まで往生際の悪い女で居続けた方がよかった?
結局自分の頭を占めているのはいつまで経っても、あの恋と気付いた夏から、ずっと彼、、、道明寺司のことばかり。
ホント、諦めの悪い女。
そう思いながらも、、、わからなかった。
自分でさえ、あんなに泣いてたわけを。
本当の事を言うと、今でもまだわからないのだけれど。
あれから、ちょうど一年が経ったんだ、と。
テレビをつけたらちょうどやっていた紅白で気付いた。
もうアイドルたちの笑顔を見たって、テレビで幸せそうなカップルを見たって、さすがに胸は痛まない。
過ぎてゆく季節の中で、当たり前だけど彼の事ばかりを考えているわけにもいかなくて。
そう言えば昔亜門、、、司のそっくりさんに、想いってのは三年で風化するって言われたなあ、と思えるくらいには傷は癒されていた。
三年で風化、か。
待ってみようじゃん、その三年を。
それでも風化しなかったら、、、もう私はきっと恋愛なんて一生しない。
あんなに辛くて悲しくなるだけのモノを、もう一度するだけの気力はまだ残っていなかった。
世間的には結婚適齢期の25なんだけどな~、、、もう達観したおばあさんみたいな思考回路になってて、よろしくないな、とは思うよ。
桜子にも滋さんにも散々ハッパかけられて。
特に桜子なんか、多分一番相談した相手だから、親身になってくれて、お酒を飲んだら、司のことをボロクソに非難して。
もう、あんたには初恋相手のくせにって突っ込むのが心地よかった。
でもそれだけ周りの人たちは自分に優しくて。
彼が居なくても自分は何とかやっていけるのかなって、前向きに思い始めていた、、、矢先の出来事だった。
あ~、演歌って興味ないな、チャンネル変えよ、とリモコンをとった刹那。
ピンポーン。
インターホンが鳴って、あれ、何か宅配便?なんて、ドアを開けて、「!☆!☆!☆!」
すぐに閉じた。
脳内パラダイス。
一度にいろんなことがぶわわっと来て、いやいやいや、見間違いでしょ、と首を振って、思い切り勢いよく鍵をかけた。
いやいやいや、何今の。
ついにはおかしくなってしまったに違いない。
独身こじらせた女の末路ってやつ?桜子に散々脅されてたけど、まさか自分もそのうちの一人になるとは。
恋愛の力とは恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。
3回唱えて、演歌も終わった頃かと、またチャンネルを戻す。
そっとドアの方に視線を移すと、なんだ、静かじゃない。
本当にあの男が来たとして私が無視した場合に考えられるケース。
① ドアを破壊。
② ドアを破壊。
③ ドアを破壊。
どれにも該当してないじゃん、よかったよかった。
やっぱり、彼の幻覚。私の勘違い。
それはそれでちょっと自分がイっちゃってる気もするから、そんなによくないけど。
と思った隙に、大音量で電話の着信音が流れる。
うえ、と思ってディスプレイを見ると、、、、思った通りの人物の名前。
往生際の悪い私の携帯にはまだ彼のケー番も、アドレスも入ってたし。
挙げ句ラインだってブロックも削除もしてなかった。
通知が止まらなくて、携帯が熱くなる。
ありとあらゆる手段で彼からの連絡が止まない、止まない。
家電まで鳴り出した日には大パニック。
電話を線ごと抜いて、携帯の電源は切って。
これで一安心。
かと思いきや。
ガンッ
ん?
ガンガンガンガンッ
待って、頭痛くなってきた。
ちょっとは大人になったと感心したのに、これじゃあ10代のクソガキだった彼、そのまんま。
想定していたパターン①から③までの全てに該当する行為きたよこれ。
ガンガンガンガンっ、バキっ
バキ?
げ、ホントに壊れる。
まって、壊れる。
ちょっと待って。
バキ、はまずい。
「い、いま空けるからっ!ちょ、、、ドアから離れてよ!聞こえてる?ガンガンやらないでよっ!大人しくしてて!!」
満を持して勢いよくドアを開けると、予想通りの彼。
世界の道明寺司様(バカ)。
彼は手に赤い薔薇の花束なんぞを抱えていて、馬鹿に拍車をかけている。
「よお」
幻が喋った!てか、動いてる、、、。
これ、現実だ。
間違いない。
ほん、ほん、本物、、、だ。
目眩がしてきた。
言うなりズカズカと私の部屋に上がり込んで、しかも土足っ!
「ちょ、、、ちょっと、、、」
「ん?」
「突っ込むとこ多すぎてどっから突っ込んだらいいかわかんないけど、、、まずはく、靴!靴脱ぎなさいっ!」
「あ?靴?」
「スッとぼけんなっ!あ~、買ったばっかなのにこのカーペットっ!ちょっとちょっと、降りて、いますぐ靴脱いで!」
「、、、久しぶりにあった恋人につれなくねえ?
相変わらず、ツンデレめんどいな」
「な、、、こ、こい、こい、こい」
頭がガンガンする。
本当、どこから突っ込めばいいのよ!
「こい、恋人なわきゃないでしょっ!あんたとあたしが、恋、恋、恋人なんて、、、ふ、ふざないでっ!
あんたねえ、今あたしが何を思ってるかわかんない?
この顔見て、ちょっとは空気読んでよ!」
「この顔?」
ジッと彼が私を覗き込んで、見つめる。
無駄に綺麗な顔過ぎて、条件反射でドギマギ。
「うん、すげえカワイイ顔。
最後に見たときより、かわいくなってねえ?」
「ちっ、ちが、、、違くて!
今すぐ帰れ!っつってる顔でしょうが!
な、何が悲しくてあんたと年越ししなきゃいけないのよ!」
てか、、、肝心なこと聞いてなかった。
ちょっと傷ついたような顔をしている男に、再び問う。
「何しに、、、来たのよ」
「何しに?」
「そう、何しに。それだけ言って、とっとと帰って」
「何しに、、、。そうだな、強いて言うならお前に、プロポーズ、しにきた」
こいつ、世紀の大馬鹿モノだ。
相も変わらず中身が残念すぎる。
「奥さんのいる人は、もうお断りだよ」
冗談っぽく言ってみたのに、ちょっと泣きそうになって、涙腺緩いな最近。
「それだけなら、もう帰って」
「もういねえよ」
「え?」
「離婚した。一ヶ月前に」
「うそ、、、」
「嘘じゃねえよ。公になるのは年明けになるけど、もうすっぱり別れてる」
「だって、、、そう、、、こ、こどもは?」
「そこなんだよなあ」
「そこって、、、ど、どこよ」
「、、、生まれてきた子供がどうもおかしいんだよ。
誰がどう見ても、肌は真っ黒。
毛はチリチリ。
白人と黄色人種から黒人が生まれるとは、生命の神秘に恐れ入ったな」
「、、、それって、、、」
「そ。妻の不貞行為で、即離婚。
DNA検査もして、白黒つけたし、あの女も別れたがってたと見てさして揉めもしなかったし?
おっかしいと思ったんだよなあ。
俺、そもそもお前にしか勃たないし、出さないし。
で、産まれた子供がこうと来ちゃあな。
もう結婚生活に意味なんて見いだせねえだろ?」
「で、でもだからって」
「なに?」
「、、、、まさか私がまだ、あんたのこと好きとか、思っちゃってる?」
「思ってるよ」
「そんなわけないでしょ。バカなんじゃない?」
「好きだろ?俺のこと」
「誰があんたなんか」
「あっそ、俺は好き」
「は?」
「お前のことが大好き。愛してる。結婚してくれたら嬉しくて死ぬ」
「私は大嫌い。愛してない。あんたみたいなバカと結婚なんてしない」
「俺はお前とやり直したい。
だから全部精算して、一年かかって、ここまで来た。
俺と結婚を前提に付き合えよ」
「あんたの一年なんて知るかっ!
しないしない、ぜ~~~~ったい、しない。
今すぐその花束持って帰んな!」
「つくし」
「うるさいバカっ!あ、こ、こっち来ないでよ。警察呼ぶわよ」
「ケーサツがこのくそ忙しい時期に痴話喧嘩の制裁なんてしねえだろ」
「だ、だから近づかないでってばっ!
あんたなんか嫌いだって言ってるでしょっ!
嫌い、嫌い、大嫌い、好きじゃない!
ちょ、寄らないでよ、愛してないんだから、結婚なんてしない!!!」
「なあ、、、俺にはそれ、好き、好き、大好き、愛しているから結婚して、に聞こえんだけど」
「なっ、、、解釈が気持ち悪いのよ、ストーカー。
やっ、ちょっと、、、来ないでってば!!!」
「じゃあどうして」
言葉を切って、彼が私の頬に触れる。
グイ、と知らぬ間に流れていた涙を拭い取ってくれた。
「うれし泣きなんてしてんだよ」
嬉し泣き?んなアホな。
と思ってみても、自分の頬に伝うその温もり。
紅白はいよいよクライマックス。
去年もみたアイドルグループたちが、今年はトリを務めていた。
大勢のアイドルたちが楽しそうにはしゃいで、カメラに向かってピースサイン。
手を大きく振って、幸せそうだった。
去年は悲しくて堪らない涙を彼女たちにもらったけれど、いまこの頬を流れてるのは違う類の涙だと、わかっていた。
「わっ、、、私、、、が、、、いっ、今更、、、あん、、、あんたなんかと、、、ひっく、、、うえ、、、あ、、あんたなんかと、、、ひっく、、う、え」
彼に抱きしめられながら背中を摩ってもらって、涙はもっともっとと溢れ出して止まらない。
「うっ、、、自惚れないでよ、、、ひっく、、、はっ、、、ああ、、、バカ、、、嫌い、、ひっく、嫌いだも、、、は、、、ふう、、うん」
「どうしてもムカつく?」
「むかつく。嫌い」
「いくらでもなんとでも言っていいから、頼むから俺と結婚してくれねえかな」
「死んでもありえない」
「頼むよ、つくし。
俺、お前いなきゃ生きてけねえんだわ。
そこをなんとか」
「じゃあ死ねば?」
「お前の為に生きるから、安心しろ」
「何よ、どっちなの」
こんなやり取りを繰り返すうちにアイドルたちは気がつけば歌い終わっていて、遠くから除夜の鐘が鳴り響く。
「ホント、しょうがないよね、司って」
「ああ」
「ポンコツだし」
「ん」
「肝心なとこで役に立たない」
「おう」
「私に、、、寂しい想い、いっぱいさせた」
「、、、わかってる、ごめん」
「絶対許さない」
「一生かけて償う」
「男に二言はない?」
「ねえ」
「じゃあ、、、しょうがない」
「結婚してくれんの?」
「誰がするかっ!でも、、、結婚を前提としておつきあいってやつなら、考えてやってもいいよ」
「、、、マジ?」
「マジ」
「子どもは三人くらいがいいよな、やっぱ」
言われた瞬間思わず吹き出す。
私の愛しい彼氏は、やっぱり頭のネジがぶっとんでる。
飛躍しすぎ。
「はなし早すぎ」
「なあ、つくし」
「うん?」
「キスして」
「いいよ、目閉じてね」
彼の唇に、そっとキスをした。
2年越しの、あけましておめでとう。
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去年のことを思い出す度、溢れ出して止まらなくなる涙がある。
あの大晦日。
小さな部屋に、ひとりぼっち。
ふったのか、ふられたのか。
結局恋の終わりを決めたのはどちらだったのかわからないまま、ただ機械的に物を食べて。仕事をして。睡眠をとって。
仕事納めを迎えて、そういえばもう年末なんだ、と。
彼のいない季節たちは、どうしてこうも早く過ぎ去って、そして自分の中に何も残さないのだろう。
どこから聞きつけたのか、私に彼氏、、、というより、不倫相手?
彼と別れてから、何人か声をかけてくれた男の人もいたけれど。
友達としてでも構わない、そう言って、なかなか引き下がってくれない人もいたけれど。
私にはそんな気力はどこにも残っていなかった。
自分はつまるところ空っぽで、空っぽなままでも人間って生きていけるのだと感心してしまったりするくらいに、空虚だった。
恋の傷は恋でしか癒せない、というけれど、そんなの迷信だった。
恋愛は今の自分にとってひどく面倒なもので、そして、、、何より男性のことをもう信じることができない。
信じようと思えるほど時間をかけて誰かに向きあうつもりもない。
最後には疲れて、面倒になって、はい終わり。
自分で挫折してしまった彼との恋を返す度に、男女の仲とは所詮そんなもんだと、どこかで警告する自分がいたりもして。
ちょっと疲れてんのかなって、自分に呆れる。
年末だからってとてもじゃないけど、あの実家に帰る気力は残っていなかったし、仲良くしてくれてる友達は大晦日も仕事していて、忙しそうで。
一人寂しく、コンビニでおでんを買って、紅白を見てた。
テレビから、明るい恋愛ソングが流れる。
大勢の若いアイドルたちが歌っている。踊っている。
そんな何でもない、年末の一場面。
楽しそうに歌う女の子たちがファンの声援に応えるように、ジャンプして、ターンして。
そう、なんでもない場面の筈だった。
本当に何でも無い場面で、自分にはほんの少しも関係のないその子たちの笑顔があまりにも純粋で、楽しそうで。
不意に涙が溢れ出して、止まらなくなった。
彼と別れたその日に、多分一生分泣いて。
もう泣かないと決めていたのに。
頭を占めるのはたった一つのことだけだった。
彼に、会いたい。
私はどうしてここにいるのだろう。
こんな大晦日に、一人で、どうしてこんなに胸が苦しくなってくるのだろう。
涙が次から次へと頬を伝って、止まらなくて。
その涙の温もりに、ホッとしている自分も居て。
もっと泣けば良かった。
ううん、もっと笑えば良かったのかな。
彼に最後まで往生際の悪い女で居続けた方がよかった?
結局自分の頭を占めているのはいつまで経っても、あの恋と気付いた夏から、ずっと彼、、、道明寺司のことばかり。
ホント、諦めの悪い女。
そう思いながらも、、、わからなかった。
自分でさえ、あんなに泣いてたわけを。
本当の事を言うと、今でもまだわからないのだけれど。
あれから、ちょうど一年が経ったんだ、と。
テレビをつけたらちょうどやっていた紅白で気付いた。
もうアイドルたちの笑顔を見たって、テレビで幸せそうなカップルを見たって、さすがに胸は痛まない。
過ぎてゆく季節の中で、当たり前だけど彼の事ばかりを考えているわけにもいかなくて。
そう言えば昔亜門、、、司のそっくりさんに、想いってのは三年で風化するって言われたなあ、と思えるくらいには傷は癒されていた。
三年で風化、か。
待ってみようじゃん、その三年を。
それでも風化しなかったら、、、もう私はきっと恋愛なんて一生しない。
あんなに辛くて悲しくなるだけのモノを、もう一度するだけの気力はまだ残っていなかった。
世間的には結婚適齢期の25なんだけどな~、、、もう達観したおばあさんみたいな思考回路になってて、よろしくないな、とは思うよ。
桜子にも滋さんにも散々ハッパかけられて。
特に桜子なんか、多分一番相談した相手だから、親身になってくれて、お酒を飲んだら、司のことをボロクソに非難して。
もう、あんたには初恋相手のくせにって突っ込むのが心地よかった。
でもそれだけ周りの人たちは自分に優しくて。
彼が居なくても自分は何とかやっていけるのかなって、前向きに思い始めていた、、、矢先の出来事だった。
あ~、演歌って興味ないな、チャンネル変えよ、とリモコンをとった刹那。
ピンポーン。
インターホンが鳴って、あれ、何か宅配便?なんて、ドアを開けて、「!☆!☆!☆!」
すぐに閉じた。
脳内パラダイス。
一度にいろんなことがぶわわっと来て、いやいやいや、見間違いでしょ、と首を振って、思い切り勢いよく鍵をかけた。
いやいやいや、何今の。
ついにはおかしくなってしまったに違いない。
独身こじらせた女の末路ってやつ?桜子に散々脅されてたけど、まさか自分もそのうちの一人になるとは。
恋愛の力とは恐ろしい。恐ろしい。恐ろしい。
3回唱えて、演歌も終わった頃かと、またチャンネルを戻す。
そっとドアの方に視線を移すと、なんだ、静かじゃない。
本当にあの男が来たとして私が無視した場合に考えられるケース。
① ドアを破壊。
② ドアを破壊。
③ ドアを破壊。
どれにも該当してないじゃん、よかったよかった。
やっぱり、彼の幻覚。私の勘違い。
それはそれでちょっと自分がイっちゃってる気もするから、そんなによくないけど。
と思った隙に、大音量で電話の着信音が流れる。
うえ、と思ってディスプレイを見ると、、、、思った通りの人物の名前。
往生際の悪い私の携帯にはまだ彼のケー番も、アドレスも入ってたし。
挙げ句ラインだってブロックも削除もしてなかった。
通知が止まらなくて、携帯が熱くなる。
ありとあらゆる手段で彼からの連絡が止まない、止まない。
家電まで鳴り出した日には大パニック。
電話を線ごと抜いて、携帯の電源は切って。
これで一安心。
かと思いきや。
ガンッ
ん?
ガンガンガンガンッ
待って、頭痛くなってきた。
ちょっとは大人になったと感心したのに、これじゃあ10代のクソガキだった彼、そのまんま。
想定していたパターン①から③までの全てに該当する行為きたよこれ。
ガンガンガンガンっ、バキっ
バキ?
げ、ホントに壊れる。
まって、壊れる。
ちょっと待って。
バキ、はまずい。
「い、いま空けるからっ!ちょ、、、ドアから離れてよ!聞こえてる?ガンガンやらないでよっ!大人しくしてて!!」
満を持して勢いよくドアを開けると、予想通りの彼。
世界の道明寺司様(バカ)。
彼は手に赤い薔薇の花束なんぞを抱えていて、馬鹿に拍車をかけている。
「よお」
幻が喋った!てか、動いてる、、、。
これ、現実だ。
間違いない。
ほん、ほん、本物、、、だ。
目眩がしてきた。
言うなりズカズカと私の部屋に上がり込んで、しかも土足っ!
「ちょ、、、ちょっと、、、」
「ん?」
「突っ込むとこ多すぎてどっから突っ込んだらいいかわかんないけど、、、まずはく、靴!靴脱ぎなさいっ!」
「あ?靴?」
「スッとぼけんなっ!あ~、買ったばっかなのにこのカーペットっ!ちょっとちょっと、降りて、いますぐ靴脱いで!」
「、、、久しぶりにあった恋人につれなくねえ?
相変わらず、ツンデレめんどいな」
「な、、、こ、こい、こい、こい」
頭がガンガンする。
本当、どこから突っ込めばいいのよ!
「こい、恋人なわきゃないでしょっ!あんたとあたしが、恋、恋、恋人なんて、、、ふ、ふざないでっ!
あんたねえ、今あたしが何を思ってるかわかんない?
この顔見て、ちょっとは空気読んでよ!」
「この顔?」
ジッと彼が私を覗き込んで、見つめる。
無駄に綺麗な顔過ぎて、条件反射でドギマギ。
「うん、すげえカワイイ顔。
最後に見たときより、かわいくなってねえ?」
「ちっ、ちが、、、違くて!
今すぐ帰れ!っつってる顔でしょうが!
な、何が悲しくてあんたと年越ししなきゃいけないのよ!」
てか、、、肝心なこと聞いてなかった。
ちょっと傷ついたような顔をしている男に、再び問う。
「何しに、、、来たのよ」
「何しに?」
「そう、何しに。それだけ言って、とっとと帰って」
「何しに、、、。そうだな、強いて言うならお前に、プロポーズ、しにきた」
こいつ、世紀の大馬鹿モノだ。
相も変わらず中身が残念すぎる。
「奥さんのいる人は、もうお断りだよ」
冗談っぽく言ってみたのに、ちょっと泣きそうになって、涙腺緩いな最近。
「それだけなら、もう帰って」
「もういねえよ」
「え?」
「離婚した。一ヶ月前に」
「うそ、、、」
「嘘じゃねえよ。公になるのは年明けになるけど、もうすっぱり別れてる」
「だって、、、そう、、、こ、こどもは?」
「そこなんだよなあ」
「そこって、、、ど、どこよ」
「、、、生まれてきた子供がどうもおかしいんだよ。
誰がどう見ても、肌は真っ黒。
毛はチリチリ。
白人と黄色人種から黒人が生まれるとは、生命の神秘に恐れ入ったな」
「、、、それって、、、」
「そ。妻の不貞行為で、即離婚。
DNA検査もして、白黒つけたし、あの女も別れたがってたと見てさして揉めもしなかったし?
おっかしいと思ったんだよなあ。
俺、そもそもお前にしか勃たないし、出さないし。
で、産まれた子供がこうと来ちゃあな。
もう結婚生活に意味なんて見いだせねえだろ?」
「で、でもだからって」
「なに?」
「、、、、まさか私がまだ、あんたのこと好きとか、思っちゃってる?」
「思ってるよ」
「そんなわけないでしょ。バカなんじゃない?」
「好きだろ?俺のこと」
「誰があんたなんか」
「あっそ、俺は好き」
「は?」
「お前のことが大好き。愛してる。結婚してくれたら嬉しくて死ぬ」
「私は大嫌い。愛してない。あんたみたいなバカと結婚なんてしない」
「俺はお前とやり直したい。
だから全部精算して、一年かかって、ここまで来た。
俺と結婚を前提に付き合えよ」
「あんたの一年なんて知るかっ!
しないしない、ぜ~~~~ったい、しない。
今すぐその花束持って帰んな!」
「つくし」
「うるさいバカっ!あ、こ、こっち来ないでよ。警察呼ぶわよ」
「ケーサツがこのくそ忙しい時期に痴話喧嘩の制裁なんてしねえだろ」
「だ、だから近づかないでってばっ!
あんたなんか嫌いだって言ってるでしょっ!
嫌い、嫌い、大嫌い、好きじゃない!
ちょ、寄らないでよ、愛してないんだから、結婚なんてしない!!!」
「なあ、、、俺にはそれ、好き、好き、大好き、愛しているから結婚して、に聞こえんだけど」
「なっ、、、解釈が気持ち悪いのよ、ストーカー。
やっ、ちょっと、、、来ないでってば!!!」
「じゃあどうして」
言葉を切って、彼が私の頬に触れる。
グイ、と知らぬ間に流れていた涙を拭い取ってくれた。
「うれし泣きなんてしてんだよ」
嬉し泣き?んなアホな。
と思ってみても、自分の頬に伝うその温もり。
紅白はいよいよクライマックス。
去年もみたアイドルグループたちが、今年はトリを務めていた。
大勢のアイドルたちが楽しそうにはしゃいで、カメラに向かってピースサイン。
手を大きく振って、幸せそうだった。
去年は悲しくて堪らない涙を彼女たちにもらったけれど、いまこの頬を流れてるのは違う類の涙だと、わかっていた。
「わっ、、、私、、、が、、、いっ、今更、、、あん、、、あんたなんかと、、、ひっく、、、うえ、、、あ、、あんたなんかと、、、ひっく、、う、え」
彼に抱きしめられながら背中を摩ってもらって、涙はもっともっとと溢れ出して止まらない。
「うっ、、、自惚れないでよ、、、ひっく、、、はっ、、、ああ、、、バカ、、、嫌い、、ひっく、嫌いだも、、、は、、、ふう、、うん」
「どうしてもムカつく?」
「むかつく。嫌い」
「いくらでもなんとでも言っていいから、頼むから俺と結婚してくれねえかな」
「死んでもありえない」
「頼むよ、つくし。
俺、お前いなきゃ生きてけねえんだわ。
そこをなんとか」
「じゃあ死ねば?」
「お前の為に生きるから、安心しろ」
「何よ、どっちなの」
こんなやり取りを繰り返すうちにアイドルたちは気がつけば歌い終わっていて、遠くから除夜の鐘が鳴り響く。
「ホント、しょうがないよね、司って」
「ああ」
「ポンコツだし」
「ん」
「肝心なとこで役に立たない」
「おう」
「私に、、、寂しい想い、いっぱいさせた」
「、、、わかってる、ごめん」
「絶対許さない」
「一生かけて償う」
「男に二言はない?」
「ねえ」
「じゃあ、、、しょうがない」
「結婚してくれんの?」
「誰がするかっ!でも、、、結婚を前提としておつきあいってやつなら、考えてやってもいいよ」
「、、、マジ?」
「マジ」
「子どもは三人くらいがいいよな、やっぱ」
言われた瞬間思わず吹き出す。
私の愛しい彼氏は、やっぱり頭のネジがぶっとんでる。
飛躍しすぎ。
「はなし早すぎ」
「なあ、つくし」
「うん?」
「キスして」
「いいよ、目閉じてね」
彼の唇に、そっとキスをした。
2年越しの、あけましておめでとう。
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~ Comment ~
みわちゃん様♡
コメントありがとうございます♡
続編 頭にありつつ本当はあまりかくつもりなかったのですが、予想以上に反響が大きくて♡
書かせていただくことになりました。
そうなんですよね、
初めから無理があった2人だったんだと思います。
右肩 読み返してくださってありがとうございました♡ 感謝感激。
これからもよろしくお願いします。!
続編 頭にありつつ本当はあまりかくつもりなかったのですが、予想以上に反響が大きくて♡
書かせていただくことになりました。
そうなんですよね、
初めから無理があった2人だったんだと思います。
右肩 読み返してくださってありがとうございました♡ 感謝感激。
これからもよろしくお願いします。!
- #563 いよ
- URL
- 2016.01/20 20:26
- ▲EntryTop
ゆみきち様(*∩ω∩*)♡
お久しぶりです♡
コメントありがとうございます♡♡♡
「右肩」読み返してくださってありがとうございました〜!
反響のあった割に拍手数が少なかったのでリピーターさんいないのかなと寂しかったところなんですが、読み返してくださる人がこんなにも多くて嬉しい(´;ω;`)
ゆみきち様のコメントにほっこり♡
これからもよろしくお願いします♪
コメントありがとうございます♡♡♡
「右肩」読み返してくださってありがとうございました〜!
反響のあった割に拍手数が少なかったのでリピーターさんいないのかなと寂しかったところなんですが、読み返してくださる人がこんなにも多くて嬉しい(´;ω;`)
ゆみきち様のコメントにほっこり♡
これからもよろしくお願いします♪
- #564 いよ
- URL
- 2016.01/20 20:29
- ▲EntryTop
asuhana様♡
12月31日聞いてくださったんですか!!!沸いた!!
NMB屈指の名曲、初めて聞いた時感動して思わず泣きそうに、、、
そしてその勢いのままこの続編に手を出してしまいました。笑
紹介した曲を聞いて下さるというコメントが実は一番嬉しいかもです(笑)
とりあえず全方位happyに出来てほっとしてるんですけども、ガラスの林檎〜もよろしくお願いします♡
NMB屈指の名曲、初めて聞いた時感動して思わず泣きそうに、、、
そしてその勢いのままこの続編に手を出してしまいました。笑
紹介した曲を聞いて下さるというコメントが実は一番嬉しいかもです(笑)
とりあえず全方位happyに出来てほっとしてるんですけども、ガラスの林檎〜もよろしくお願いします♡
- #565 いよ
- URL
- 2016.01/20 20:34
- ▲EntryTop
さとぴょん様♡
ドアを破壊。
で、笑っていただけたということで♪
やーほんとに、正統派つかつくを久しぶりに書いたんじゃないかってくらい久しぶりでテンション上がって長引いちゃいました(笑)
遅筆の私が2時間で書き上げたという、、、
右肩にも思い入れがありますからまた読み返していただけると嬉しいです♡
つかつくを幸せに出来てよかった。
あとはガラスの林檎で早く2人を幸せにしたいです(´;ω;`)
で、笑っていただけたということで♪
やーほんとに、正統派つかつくを久しぶりに書いたんじゃないかってくらい久しぶりでテンション上がって長引いちゃいました(笑)
遅筆の私が2時間で書き上げたという、、、
右肩にも思い入れがありますからまた読み返していただけると嬉しいです♡
つかつくを幸せに出来てよかった。
あとはガラスの林檎で早く2人を幸せにしたいです(´;ω;`)
- #568 いよ
- URL
- 2016.01/21 10:59
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NoTitle
一年、淋しい時間をお互いが過ごして、やっと司が会いに来てくれた。
奥さんも不倫していて、鉄の女も認めざるを得ない離婚だったんですね。
愛のない結婚生活・・・無理がありますよね。
もう一度右肩をを読んで、またまた泣いてしまいました。
前回のお返事をみて、期待してお待ちしていましたが、ホントに良かった、良かった(笑)