「ガラスの林檎たち」
第二章 わたしを離さないで

ガラスの林檎たち 52

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牧野つくし、、、か。
一年近く自分は『牧野つくし』でいたというのに、未だにその名が自分を表すものだと、ハッキリ自覚できないままだ。
だからといって、『城宮雫』という名がしっくりくるかと言えば、そういうわけでもないのだけれど。
結局4年、、、全てがまっさらな自分になってから4年という月日が経ちながらも、未だ自分に対する確固たるイメージは掴めていないまま。
だから、もしかすると、道明寺司という人物は自分にとっては脅威の存在なのかも知れない。
自分でさえ知らない自分に対する確固としたイメージを、彼はハッキリ覚えていてくれていた。
過去の自分を知る人に巡り会うのも彼が初めてだったから、それは余計に。
彼に言ったとおり、彼のことが嫌いなわけではないし、むしろ自分を好いてくれているだけ、彼にも好意に似たようなものは寄せているのかもしれないが、、、それでも彼が自分にとって、ある種気味の悪い存在であることも確かだった。
彼はいい人だし、優しい人で、自分にとっては嫌いになり得る要素などない。
だからこそ、お父様の怒声を覚悟してまで、彼と自分との接点をなくそうと思った。
過去のことを洗いざらい話して、自分がいかに汚く醜い生き方をしてきたかを知れば、きっと彼は尻尾を巻いて逃げ出すだろう、と。
しかし彼はそうしなかった。
いつも自分に対してあれだけ嫉妬深く、束縛もそれなりにしてくる俺様男のくせに、『牧野つくし』を見る目は酷く優しかった。
生きててくれて良かった___まさか、彼にそんな反応をされるとは、これっぽっちも思っていなかった。
酷く罵倒され、詰られ、お前みたいな女なんてもう知るか、、、そんな反応が正しかったのだと思う。
いくら自分が城宮家の養女であるとはいえ、それと同等、あるいはそれ以上の力を持っている道明寺財閥の御曹司なのだから、いくらでも自分を無下にすることは出来たはず。
なのに、彼はそうしなかった。
彼は、自分に対してあまりにも紳士だった。
あれ程重い話をぶちまけてしまった後、まさか彼が次のデートはどこがいい?と、普通に返してくれるとは思いもしなかった。
だからそれがただただ不思議で、恵の雫に対する執着心のようなものも感じ取れて若干薄気味が悪くなったのが本音だった。
売春したこともあって、補導歴もある、児相出身で、、、義理の父親に抱かれるような女なのに、なぜ?
牧野つくしのことが、そんなに好きだったの?
、、、そんなに、愛していたんだ。
ちらり、と書斎の窓から、先ほど司と自分が帰り際に話していた門の外を見やる。
不思議な既視感。デジャブ。
彼に頭を撫でられたその感触は、未だじんわりと体温を残している気がして、無意識のうちに自分の頭を摩っていた。
変な人。
ホントに、変な人。
彼の頭には今までもこれからも、牧野つくしのことしかないなんて、そんなことにチクリと寂しさを感じる自分もいるなんて、変な感じだ。
もしかして、過去の自分にでも嫉妬しているのかな、と考えて自分でも可笑しくなってしまう。
___どうか、してるよね。こんなの。

「、、、なにがおかしい、雫」

ふ、と微笑んだ瞬間、後ろから抱きつかれた感触にハッと意識を取り戻す。

「、、、あはは、、、おかしそうにでも、見えました?」

「窓の外見て浸ってるのかと思いきや、可笑しそうに笑ってるからそう思ったんだけど、違うのか」

「違いますよ。ただ、、、男の人って、、、」

「ん?」

「なんか、、、バカだなあって。
なんていうか、結局男の人の方が夢見がちっていうか。
女は打算的で、現実主義なところがあるけれど、男ってそうでもないでしょ?
いつまでも、いくつになっても、昔好きだった人を美化して、神格化すらして、そして、、、どこまでものめり込む。
次第に、身代わりでもいいかって。
いつの間にか、ロミオになってる、、、って言うのかな」

「はは、、耳が痛いな。
それって、司くんのことか?それとも、俺のこと?」

「ん~、、、どっちかな。どっちもかも」

窓越しに貴之と目が合って、瞬間思わず微笑んだ。
やっぱり、最初に司に言ったとおり、司と貴之は、とても似ている。
人の愛し方と、その執念。
怖いくらいに他の人になど目を向けない、その様が。

「まあ、そんなもんかもな。
でもそれに心地よさを感じている自分がいるのも本当なんだから、不思議だよ」

チュッと項にキスを落とされ、軽く胸を揉まれて、、、すぐさま快楽のせいで頭に霧がかかり、そのまま目を閉じ、身体を預けようとして、、、途端頭がヒヤリした。
先ほどの司くんの瞳と、頭を撫でられたその手の感触を思い返して、またしても気分はもやもや。

「、、、お父様」

「なに?」

「今日はもう、、、寝てもいい?
なんだか私、とても疲れちゃって」

自分から行為を断るなんて、初めてのことだったからちょっとドキドキして、どこかに罪悪感も覚えた。

「それに、今日生理だから、、、どっちにしろ最後までは出来ないし。ね?」

力を入れて抱きしめられて、その後ふっと解放されて、、、ああ、と一気に力が抜けたような気がした。

「、、、悪い。お前も明日は学校だもんな」

「、、、、ううん、いいの。
生理終わったら、その時はいつでも呼んで。
じゃあ、、、おやすみなさい、お父様」




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~ Comment ~

NoTitle

雫‥愛し始めたのかなぁー ドキドキドキドキ♡

記憶を無くす、家族を亡くすって、自分じゃない自分‥知らない自分って の感じが凄く伝わってきます。

ドキドキ 
どうなっていくのーーーーって、感じです。

asuhana様♡

貴之の壁は厚いので、どうですかね(笑)
でも、まだまだ、雫が司を愛する日は遠そうです。
気になり始めてはいるけれど、殆ど物語終盤まで雫が司を完全に愛することはないかな
気長に気長にお待ちください。
次回の更新は短編です♪

まだまだ時間がかかる。なんて楽しみなんでしょうか。
気持ちが心が傾斜していくさまをじっくりみれるのが楽しみです。

短編も楽しみです。

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