「ガラスの林檎たち」
第三章 愛もお金で買えますか?

ガラスの林檎たち 60

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「ねえ司くん」

「なに」

「さっきから無言で食べてるけどさ、あ~その、卵焼き、、表面は焦げてるけど、一応卵焼きなんだけどそれ、どう?マズイ?なんかもう、ハッキリ言っていいよ。私もさ、正直美味しいとは、、、ホント、不味かったらそこのファストフードとかに入ってもいいしさ?」

黒く焦げた唐揚げに卵焼き、おひたしに過分にかかった酢、唯一まともな食べ物と言えば、付け合わせのプチトマトくらいのもの。
美香におだてられてお弁当もどきを作ってしまったが、所詮もどき。
こんなもので司から自分への評価が上がるとは到底思えない、、どころかむしろ下がるのでは?
女子力という名の株がストップ安になっている可能性は十分考えられる。
通常のカップルが当然行ったりやったりしている「普通のデート」にこだわりすぎたかもしれない。
大人しく家のシェフにでも作らせればよかったのだ。
美香との泊まりでお弁当を作っていたときの、深夜テンションでその気になってしまった自分を殴りたい。
見た目も最悪ならば味も最悪だろう。
そう、最悪。
薄い味付けの卵焼きに、焦げた唐揚げに大量の酢が入ってるおひたし。
児相にいた頃の自分ならともかく、今の自分ならばまず食べないであろうラインナップの数々だ。
見た目は悪いけど味は美味しいから、という台詞を言えないのがこれほど辛いとは。

「、、こ」

「こ?」

「個性的な味だな」

、、気を遣われてる。
どうせならマズイと一刀両断してくれた方がまだマシな気がする。
私が逆の立場なら嫌がらせか何かだと思うレベルだもの。

「ごめん、司くんホント、、不味かったら食べなくてもいいから」

所詮は自分の自己満。
道明寺財閥の御曹司様に食べさせるような代物では到底ないのだ。

「いいよ、お前が俺のために作ってくれたんだろ?食うよ、全部」

牧野つくしのこととなるとあれほど女々しい司くんが、なんて男前な発言、、と感動している場合ではない。
自分でも美味しくない、どころかマズイと思ってるものを他人に食べさせるのはことさら申し訳ないような気がして。

「半分は、私のだよ」

とはいえ、司くんのことだ。
一度言い出したらテコでも全て食べる気だろう。
ダイエットのために今日は脂分もタンパク質も控えるつもりでお弁当は司くんの分しか作ってこなかったが、仕方ない。
ここは自分への戒めとして、半分は自分で処理することにしよう。
うう、我がお弁当ながら食べるのになんて勇気の要る。

「まずは卵焼き_しょっぱ!しょっぱい!あれ?かなり味薄くしたのに、、」

その上ジャリ、という感触がしたので疑問に思っていると、なんと卵の殻がそのまま入っていた。
ちょっと待って城宮雫、あんたこんなのを道明寺司に食べさせたの?卵の殻を食べるなんて、彼には生まれて初めての経験だろう、間違いない。

「唐揚げはもっとうまくできたはず、、って、かたっ」

固い。
なぜかカチコチに固い。
その上やたらと醤油と生姜の味が濃くて、食べれたものではない。

「おひたし、、ゲホゲホっ」

酸っぱい。
異様に酸っぱい。
このレベルの味で少しマシになったと思った美香と私は、やっぱり深夜テンションの異様さに巻き込まれた違いない。
総評、とてもじゃないけど食べれたものじゃない。

「あ~司くんっ!やっぱやめよう食べるのっ!こんなの食べたら身体に悪いよ~やめよ?」

「いいって」

「よくないっ!、、ていうか、このレベルの料理を顔色一つ変えずに淡々と食べれるなんてビジネスマンってみんなこうなの?怖い」

「、、てめ、怖いだあ?お前が作った飯じゃなかったら食えたもんじゃねえよ。でもお前が俺のために作った飯を残せるわけねえだろうが、俺の4年越しの純情なめんなよ」

「純情って言われても、、だってさ、司くん、食べるものっていつも家のコックさんとかが作ってくれる一級品ばっかでしょ?その、、こんなもの食べたら体内で化学反応でも起こすんじゃないかな」

「なんだそれ、俺は化けモンか」

「いや、近いものはあるよね、うん、、って、うそだって。そんな怖い顔しないの」

と、やいのやいのおしゃべりにうつつを抜かしている隙にお弁当の中身はからっぽに。
お坊ちゃんのわりにこんなお弁当を完食するなんて根性がある、と感心してしまった。
それも、、牧野つくしへの深い愛故、だとも思う。
立場を変えて考えてみて、これがお父様でも恵が作ったお弁当ならばどんなに美味しくなくとも完食するだろう。
つまりは、そういうこと。
そう、城宮雫のためにではなく牧野つくしのために。
彼の行動はすべて城宮雫を通して私の中のつくしのためにしている、ただそれだけのことに過ぎない。
それは一層孤独感を強めるけれど、そうと割り切ってしまえば彼を騙すことに罪悪感を感じることはない。
彼が自分を通して牧野つくしを見ているのなら、、興味の対象がつくしにしかないのなら、雫が彼に何をしたって構わない。
だって所詮、雫はつくしの代わりでしかないのだから。
彼が騙されるのは城宮雫に、で、牧野つくしに騙されるのではないのだから。
だから彼に、、情なんて沸くはずもない。
絶対に割り切ってみせる。

「まあ、美味くはなかったけど、わざわざありがとな」

弁当、と言って優しく微笑む司くんには最高の笑顔で答えるしかないじゃないか。
つくしならしなかったような、とても自分が可愛く見える角度で、ニッコリ。

「こちらこそ、食べてくれてどうも」

チュ、と頬にキス。
そうすれば司くんも頭をポンポン撫でてくれて。
ハタから見れば、きっとラブラブの恋人同士に違いはないのだろう。
時々自分でも錯覚するくらいなのだから。






「そう言えば司くんさ、知ってる?」

「ん」

「あのさ~藤堂商事の、、え~と、名前出てこない。
あそこの社長、先月脳梗塞だったかな、緊急入院して、どっかの神経やっちゃって、退陣せざるを得ない~みたいな話。
で、あそこの娘が後任に推されてるみたいで、急遽来週帰国と就任パーティーを開くって。
お父様から聞いたから、確かだよ?」

「あ~、、西田がそれっぽいこと言ってたな。_来週?」

「そ、来週。だから今回の同伴は司くんにお願いしようかな。お父様はどうせお母様と来るはずだし。エスコートしてよ?」

「、、ああ。
しかし静が社長って、ガラじゃねえにも程があんだろ。温室は嫌だのなんだのが口癖だったくせに、結局は親父の後任か」

「静?ああ、今度就任するっていう、女社長さん?司くん、知り合いなの?」

「知り合いっつか、幼なじみ。あいつは__そうだな、記憶を無くす前のお前と一応知り合いだったから、何か話聞けんじゃねえの」



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トントン様^^

こちらこそお待たせしてます、申し訳ないです。
そして、読んで下さってありがとうございますです!
本当に、私の二次小説を読んで下さる読者様は心が広くて優しい方が多いと思います。
滞りがちのこのブログですが、精一杯頑張りますのでこれからも是非よろしくお願いします!
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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