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「ガラスの林檎たち」
第三章 愛もお金で買えますか?

ガラスの林檎たち 63

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雨はいつまでも降り続けていた。
寒くて冷たいのに、なぜだか私はその、、大きなお屋敷の前を動こうとはしない。
震えるほど寒くてたまらないのに、なぜかそこから離れないでいる。
なんで?どうして。
ふ、と下を見ると、驚くことに身に纏っているのは英徳学園の制服。
お金に困った時に制服は売ったはずなのに、なぜ?
足下は高校生らしく、ローファー。
セミロングなはずの自分の髪型も肩までのショートヘアへと変化している。
不可解なことがありすぎる。
同時に辿り着く一つの結論。
_ああ、これ、もしかして、、夢?
夢だと自覚しながら夢を見たのは人生で初めてかも知れなかった。
けれど、夢以外に今この状況は説明のしようがない。
髪型についても、服装についても。
夢なら自分の思い通りになってもよさそうなものだけど。
雨宿りしなきゃ、と足を動かそうとしてもビクともしないんだもん。
しばらくそのままで雨に打たれていると不意にお屋敷の前に見覚えのあるロールスロイス。

_あれ?あの車、確か_

「牧野!?」

なんて思っていると、不意に掛けられる声。
聞き覚えのある、その声の主は。

_司くん?

間違いない。
今よりはいくらか顔つきが幼いけれど、確かに司くん。
あれ、今私のこと、牧野って呼んだ?

「何やってんだよ、この雨ん中」

_まあ、ごもっともよね。本当何やってんだか。

「すっげえびしょ濡れじゃんか、あほかお前、早く来いっ」

_状況からして、司くんと待ち合わせでもしていた?いや、それなら邸で待ってるだろうに。この状況は不自然すぎる。

司君の心配そうな目と、自分の目がぶつかる。
相変わらず、司君にはとことん愛されている、牧野つくしの姿がそこには映っていた。
ド庶民のくせに。
ううん、夜逃げなんてしちゃうような、庶民以下の貧乏人のくせに。
司君に気に入られていること以外取り柄なんかないくせに。
、、つくしのことが酷く疎ましく感じる、瞬間。
嫌い。
牧野つくしなんて大嫌いだ。
こんな風に雨に打たれてるのだって、こうすれば司くんに誰よりも心配してもらえるからでしょ?
あざとくて、媚びた性格がまるで恵のようで。
夢の中のつくしでさえ憎たらしい。

「話があるの。あたしもう、、あんたとはつきあえない」

口走っているのは自分のはずなのに。
同時に酷く驚いている自分が存在した。
つきあえない?どういうこと?
目を見開き驚愕した司君になんらかのフォローを入れようと口を開くが、それは叶わなかった。
この夢はとことん私の思い通りにはならないらしい。

「_なにいってんだ、お前」

彼の眼は驚愕と絶望、そして僅かに何とも言えない暗さに戦いていた。
つくしの言うことが信じられない、、信じたくないとでもいうように。

「あんたの家も、今日出てく」

_家?出てく?どういうこと?同棲を解消するって話?

この夢が過去の現実なのか、まったくの自分の妄想なのかわからないから、混乱しっぱなし。

「ちょっと待て。お前相当おかしいぞ、なんでそうなるんだよっ」

司君がつくしを怒鳴る。
その迫力についビクっとなって、同時に頭のノイズが高く軋む。
ガガガ、と頭が削られるような感覚に恐怖すら覚える。
つくしが司君に何かを言い返しているが、もう声は私には聞こえない。
司君の怒声も。
まったく2人のやり取りが無意味なものになっていく。
視界が段々と薄暗くなっていき、それと比例して頭の軋みが収まった。
_場面が変わる。

もう私の目の前から司君はいなくなっていた。
自分は雨の中、どこかへと歩を進める。
まったくもってどこに行くかはわからなかったけれど。
2人の話に蹴りがついたらしい。

「牧野」

再び後ろから声がかけられる。
やっぱり、司くんの声。
振り向こうと思ったけれど身体はやはり自由にはならず。

「お前は俺を1人の男として見たことがあるか?」

司君に問われる。
ぶっちゃけ、意味わかんない。
けれどつくしにとっては意味のある質問なのだろうか。

「俺の家や母親全部とっぱらって。ただの男として見たことが一度だってあるか?」

「__もしあんたを好きだったらこんな風に出て行かない・・さよなら」

つくしが、ポツリと言った。
それが自分の本意でないことくらい、私にもわかった。
だって、自分の目から驚くほどの涙が堰を切ったようにあふれ出る。
雨で誤魔化されているけど、少し嗚咽も込み上げるくらいに。
つくしは泣いていた。
泣いて、泣いて、ボロボロ泣いていた。
どうしてそんな風にボロボロ泣いているの?
そんなに司君が好きなら離れなければいいだけじゃないの?
わからない。
わからないよ、つくし。
あんたが何を考えているのか、分からない。
_またもや込み上げる嗚咽、それと同時に、再び目の前が暗転する。









目を覚ますと、そこそこ見慣れた天井。
ズキン、と蟀谷のあたりに痛みを覚え、思わず右手で押さえる。
、、ここ、どこ?
ふとした違和感を覚え、起き上がると、、ベッドの傍らには見慣れた自分の恋人さん。

「お、ようやく起きたかよ。もう身体大丈夫なの?お前」

「、、司くん?」

訳が分からないという顔で彼の方を見る。

「どうして私ここに_一緒に花やしき、、浅草にいたよねえ?私たち。嘘、夢見てたの?やだ_」

「_バカ、ちげえよ。お前がデート中にぶっ倒れて_まあ医者に診せたらただの貧血だって話だったから、とりあえずウチに帰って休ませてたってわけ。覚えてねえの?」

「覚えて、、?覚えては、、う~ん?ごめん、覚えてないわ」

何かの話をしているときに酷い頭痛に襲われたような気はしていたが、、倒れたこともその経緯もまったくもって覚えてはいなかった。それは事実だ。

「今、、何時?司君」

「_夜の8時。だから、、5時間くらいか?お前がぶっ倒れてから。
ま、思ったよりも早く目ぇ覚めてよかったよ。
どう?気分悪かったりとか、どっか痛いとことかは、あったりしねえ?」

自分の記憶では確か、、お昼ご飯を食べて少しお喋りをして_というのが最後の記憶であったから、倒れたのは正午をいくらか過ぎていただろう。
それほど深く眠りについていたわけではないと知って、少し安心もした。
もっとも、せっかくの一日オフを無駄にしてしまった感は否めないが。

「司君、あのね?」

「_なに、腹でも減った?」

「う、、お腹は空いた_けど、そうじゃなくてね?あの、、司君の夢、見た」

「俺の夢?へえ、可愛いとこあんじゃん、お前にも。で、どんな夢だよ」

「、、司君と別れる夢」

「_あほかお前、縁起わりい夢見てんなよ」

「、、うん、ごめんね」

「別に怒ってるわけじゃねえけどよ」

「でもね?なんか凄く真実味のある夢、、ぽかったの。
なんかね、あ、そうそう、ここの邸の前で私が司君にここ出てく、みたいな話をしてね?
それで、、それでね、もしかしたらこれ、私の過去の記憶、だったりするのかなって」



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サーモンチップス様^^

光栄なお言葉ありがとうございます^^

いや~大分更新が遅れてしまっています、申し訳ないです。

ひっさしぶりの64話。

約一ヶ月ぶりです、、。

本当にだらしなくてすみません。

少しだけ物語が前進する話、是非是非読んで頂ければ幸いです。
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