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「ガラスの林檎たち」
第三章 愛もお金で買えますか?

ガラスの林檎たち 65

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彼女のそんな悲痛な顔を見たのは初めてだった。
雫は、なんというか飄々としている女だ。
養護施設出身の養女という、社交界でもそこそこ有名な文句でバッシングされることも、直接嫌がらせを受けることがあっても基本的には何処吹く風。
牧野なら、やられたらやり返すし、言われたら言い返すが、雫の場合は牧野とは違う。
物事に対するへこたれ無さは唯一共通する部分であるが、雫は、ある種淡々としていて、周りに関心がないようにも見える。
好きじゃない人に嫌われたって、どうでもいい、と。
彼女にとって大事なのは今この時が楽しいかどうか。
他人などおかまいなしで、特に言い返しもやり返しもしない。
だから、意外だった。
彼女にとって自分の過去は、彼女にとってはどうでもいいと思っていた。
彼女もそう言っていたように。
彼女は常に前を向いてて、俺じゃない男を見ていて。
つまるところ過去の自分にも俺自身にもそれほどには関心があるようには見えなかったから。
だから、意外なのだ。
彼女が、、雫が、過去牧野つくしであった自分を気にして、あまつさえ牧野であった自分に嫉妬するなど。
好きなのは雫ではなくて、あくまでも自分に過去の牧野つくしを重ねているだけだと。
そう言いきる彼女は、本当に意外だった。
と、同時に。
今居る彼女が急に弱々しく頼りない存在に思えて。
こんな状況なのに、彼女の横顔を見つめながら初めて、、コイツのことを綺麗だ、そう思った。

「ごめん、、おかしなこと言ってるね、私」

「、、雫、_」

「わかってる!おかしいのは私でしょ?今更こんな、、どうして、私がつくしになんか、、戻りたいなんて、、、そんなの、思うはずないのに。それなのに、、なんで?どうして?今更どうしたって、どうしようもないのに_私、、惨めだもん。私が私を追い詰める。過去の私が今の私を、、どこまでも惨めにする。それが、、耐えられない」

彼女がそう言い終わる前に、彼女を抱きしめた。
彼女も驚きも抵抗も特になく、すんなりと俺に抱きしめられた。
俺が彼女に今何かを言うのは得策ではないだろう。
しかし彼女をほうって帰るのはもっと得策ではない。
だから、彼女の気の済むまで、黙って彼女を抱きしめることにした。

「、、司君」

しばらく経って、ポツリと雫が呟いた。
そっと身体を離しながら、それでも声は震えていた。

「_ありがと。もう、大丈夫だから。いいよ」

彼女にしては珍しい、無機質な拒絶の仕方だ。
大丈夫でもなさそうだし、良いとも思えなかったが、彼女がそう言う以上はそう思うしかない。

「、、ごめん。帰っていいよ、司くん。ごめんね、ありがとう」

彼女が素直に謝るのも礼を言うのも珍しいと言えば珍しい。
彼女はそう言ったっきり黙りこくって、俯いてしまった。
不意に何か、、何かを言いかけようとした。
そうした方が状況が好転するような気がした。
けれど、これほど弱々しい彼女を目の当たりにしたのも初めてだった自分は、それほど気は利かなかった。
お互いにもうこれ以上の会話は認めなかった。

「わかった。落ち着いたら連絡しろよ?、、今月はもう無理かもしれねえけど、来月はどっかで休み作るから。
、、ま、どっちみちその前に静んとこのパーティーがあるから、無理に予定合わせなくてもいいけど」

「、、ん。そだね」

「_雫」

「、、、なに」

「俺はお前のこと別に汚ねえなんて思ってねえからな?」

「_わかってるよ」

「、、それだけ。じゃあ、来週な」

「、、うん。おやすみなさい」











空は、そこそこどんよりとしていた。
雨が降る予報ではなかったけれど、傘を用意した方がいいかな、と思うほどには。
おまけに昨夜からの頭痛は朝になってもつくしを悩ませた。
時々フラッシュバックする断片的な記憶と共に。

「、、それで?お父様、話ってなんですか?私、もう学校に向かわないといけない時間なんですけど」

自分でもふて腐れた顔をしているのはわかっている。
それでも、そんな顔をしないととてもじゃないけどやってられなかった。
面白くない。
そう、簡潔に言えば、面白くなかったのだ。
雫である自分がけして知らない過去の自分と、司くんとの記憶。
誰にも汚せないような絆で結ばれた2人が憎たらしく、つまらなくて、面白くない。
牧野つくしがなんだっていうの。
過去に要らないと捨てたものに脅かされたような気分だ。
つくしは弱かった。
弱くて、どうしようもなくて。
城宮雫になった時にそんなつまらない過去は捨てたはずだったのに。

「いや、、最近司くんとはどうなのか、気になってただけだ。どうなんだ?うまくやれてるのか、彼とは」

「、、うまくって。いいえ、全然。そもそも、連絡を取ってないわ、彼とは」

「、、それは、どうして?彼への復讐のために、お前という恋人役が不可欠なのはお前だって理解してるだろう?_今更彼に罪悪感でも?」

「罪悪感?」

はは、と心の中で渇いた笑いが漏れる。
罪悪感?私が司くんに?_有り得ない。冗談じゃないわよ。私が彼に妙な気持ちなんて、持つわけ無い。今までも。これからも。

「罪悪感なんて。ただ飽きただけ。鬱陶しいんだもん」

「飽きた?バカなことを言うな。
そんな馬鹿げた理由で_納得出来るとでも?、、とにかく、今更放棄するのは俺が許さない。
俺がお前に許さない。彼との交際は続けなさい」

「別に_お父様に納得して頂く必要はないでしょ。
許さないってどうするの?
私をここから追い出す?
出来るもんならね。
私が出て行ってお母様がどうなっても、私は知らないからね」



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ami様^^


コメントありがとうございます!そして遅れてすみません。
リアルが息切れするほどのいそがしさに半分死んでおりました。
プライベートが充実していると言うよりは業務的な忙しさに殺されそうでした笑

そうですねえ。
ご指摘の通り雫の心は少しずつお父様からは離れてるかな?
とはいえ、まだまだお父様>司君 笑 なことに代わりはありませんがw

亜門を好きといって下さり、嬉しいです。
思い切り自分好みに亜門を書き直してみたら皆様から意外と?共感を頂けて。
二次作家冥利に尽きます。笑

「ガラスの~」の更新はまだですが、今日更新した短編も少し暗くシリアス風味の強い話になっているので、是非ami様が気に入って頂ければと思います♪

コメント、ありがとうございました! 

asu様^^

コメ返遅れて申し訳ないですm(_ _)m

いや~長編の更新、楽しみにして頂いていたのにまだ出来ていなくて、すみません。

お詫びの気持ちを込めて!短編を書かせて頂きましたので、どうか目を通して下さると嬉しいです♪

雫と司の恋愛関係もここからが山場なので!是非お楽しみに(*^_^*)
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