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「愛さずにはいられない」
第二章 軽蔑していた愛情

愛さずにはいられない 28

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「___もしもし?祥一郎か?あ?ばか!ちげーよ。___そうだ。いいからすぐ来い。
____わかんねえんだよ、それが。夜勤明け?んな事誰も聞いてねえんだよ。
____耳元で怒鳴んじゃねえ!わかったわかった。ああ、よろしくな。」

電話の相手と揉めているかのような巧の口ぶりにつくしが心配そうに巧を覗き込んだ。

「___んな心配そうな顔すんじゃねえ。大丈夫だ。あと一時間もすればここに来るってよ。」

「・・・・・・・・東城さんには、いつも迷惑かけてばかりで本当に申し訳ないわ・・・・。
あたし、いつもあなたには何かしてもらってばかりで・・・。
あたしはあなたに何にもしてあげられないのに____。」

「だーかーらー!
さっきも言っただろうが。こんな時くらい謝るんじゃねえって。
俺は俺がそうしたいからやってるだけだ。気にすんじゃねえよ。」

まだ何か言いたげなつくしに巧がさらに言い募る。

「____お前さ、絶対長女だろ?」

突拍子もない巧の質問につくしは狐につままれたような気分になった。

「・・・・・え?_____ええ。そう、だけど・・・・・。」

「しかも高校卒業してすぐ社会に出て一人暮らし始めたっつってたよな?
そりゃ今時の若い女のすることじゃねえもんな。・・・・だからお前ってそんなに『いいこちゃん』なんか。
こんな時くらい誰かに甘えたっていいんだぜ?お前はあれこれ余計なこと考えすぎ。
大人の中で優等生演じなきゃいけなかったからって変に枠なんか作るなよ。こないだ言ったろ?
愚痴なら俺がいつでも聞いてやるって。一つくらい自分が楽になれる場所があったっていーんじゃねえの?」

「___楽になれる場所・・・・・?」

「ああ。それにな____お前、何もお返しできない、とか言ってっけど俺はもう十分すぎるくらい貰ったさ。」

「・・・・・え?」

つくしがきょとんとした顔で聞き返す。

「___最近さ、お前感情出せるようになったよな。
怒ったり泣いたり子供みたいな駄々こねるし、笑った顔だって見れた。
出会った頃のお前は死んでんだか生きてんだかよくわかんない表情っつか、なんか無表情だったよな。
俺はお前が今のままでいてくれるなら喜んで何でもするさ。」

なんとなく困ったような顔をするつくしに構わず続けた。

「____ま、とにかく俺に変な気まわす必要ねえってことだよ。ほらお前はちょっと寝てろ。
祥一郎が来るまではまだちょっとあるからよ。」

だんだんと先ほどの眠気がよみがえってきたつくしは巧に促されるままに布団をかけ直しそっと目を瞑った。







________________________________________________







疲れがたまっていた巧は祥一郎を待ちながら意識が落ちかけていたが不意に鳴らされたインターホンにより目を覚ました。

「ったく、遅えなあいつ。一時間は遅れたぜ。」

巧はなにやらブツブツ文句を言い腰を上げると玄関へ向かい自身の友人である西門祥一郎を迎え入れた。
巧は祥一郎の姿を認めると「おっせえよ、一時間遅れたぜ。」と不満をぶちまける。

その口調に祥一郎もやや苛ついたのか語気を荒めて返した。

「・・・・・お前な、俺は夜勤明けだったんだよ!家で寝てたんだ!貴重な休日だったんだぞ?
それをお前のためにわざわざ来てみれば開口一番文句しかねえのかよ。」

「ふん、そんなの関係ないね。俺が来いと言ったら一秒で来いよ。つべこべご託並べてんじゃねえ。」

あまりと言えばあまりの巧の言いぐさに祥一郎のこめかみに青筋が浮かび上がる。

「おっ・・・・・まえなーー。いい加減に・・・・・・。」

そう言いかけたが流石にばかばかしいと思ったのか祥一郎は半ば諦めたかのように軽く溜息を吐いた。

「・・・・・うん。そーだよな。お前って昔からそう言う奴だよな。」

「なに一人でブツブツ言ってんだよ?まあ、いいや。とりあえず早く診てやってくんねえ?」

「___おう。患者は?」

「ああ、こっちのベッドで寝てる。」

巧は祥一郎をつくしの寝ているベッドへ案内した。
祥一郎はベッドの上のつくしに目をやると『あれ?』と首をかしげた。

「あれ____?この子_____。」

「あ?んだよ、どした?」

「ん?あれ?でもたしか_____。」

「おい!つくし!起きろ。医者来たぞ。」

一人何かを考え込む祥一郎をよそに巧はつくしを起こす。
巧の声に覚醒したつくしが目をそろそろと開けた刹那、祥一郎が記憶からつくしの名を引っ張り上げた。

「ああ!思い出した!この子だよこの子。なんだっけ。牧野つくしちゃん?ほら、お前の想い人の。」

「は?んだよ、お前ら面識あんのか?」

「ほら、あのパーティーだよ。大使館の。ほら、ドイツの。お前がドタキャンしたやつ!
そこでちょっと喋ったことあんだよ。ね?つくしちゃん。」

寝ぼけ眼だったつくしであったが『つくしちゃん』と掛けられた声に完全に意識を取り戻した。
祥一郎の方に目を向け、つくしがまだ寝ぼけているかのように返事をする。

「あ・・・・・・。え・・・・・・・・?あの・・・・・・。あれ・・・・・・?」

「ほら、覚えてない?ドイツ大使館でちょっと話したよね?俺だよ、西門祥一郎。」

「あ・・・・・、はい・・・・・。
え・・・・・あの東城さんの知り合いのお医者さんって西門さん・・・・?」

つくしの表情をどこか不安げだと判断した祥一郎はウインクして見せる。

「心配しなくていいよ、つくしちゃん。これでも一応博士号まで取っている名医だからね。」

高熱で浮かされていたせいかもしれないが祥一郎の姿と総二郎の姿が一瞬重なって見えた。
なぜだろう。名前が『西門』だから連想されやすいのだろうか。
それと同時に最近ほとんど思い出さなくなっていた高校時代の記憶がよみがえる。

こんなにノスタルジックな気分に浸るのも熱のせいなのだろうか。なんだかとてつもなく懐かしく、それでいて切ない、大声で泣き出してしまいたいような、誰彼構わず抱きしめて欲しいような、そんなさみしさに淡い寂寥感を覚えた。


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Re: はじめまして

くろうさ様。コメントありがとうございます!

そうですね。つくしが一番嫌いな「誰かに守ってもらわなきゃいけないようなやわな女」に自分がなってしまうという・・・笑

確かに他の二次サイトさんではあまり見かけないお話になっていると思います。

ありがたいお言葉、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。
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