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「愛さずにはいられない」
第三章 愛さえあれば

愛さずにはいられない 53

 ←3月20日の更新お休みです。 →愛さずにはいられない 54

雨が降っている。
暗くて深くて悲しみに満ちたようにも見える雲から雨粒が途絶えることなく零れ落ち続ける。
予報では今夜いっぱいは止まないだろうとのこと。
司は早朝会議の為本社へ向かう車の中、ただただ窓に当たる雨音に耳を傾け、感情の籠もらない目で窓の外に視線をやる。

____また抱き潰しちまった。

___サイアク。全然気持ちよくねえし。

気を抜けば脳裏に蘇るつくしの許しを乞う声と涙でぐしょぐしょに濡れた彼女の顔。
気持ちいい筈もない。
あそこまで____あそこまで全身で自分を拒否し受け入れようとしないつくしを見たのは初めてだった。
これまでは彼女の泣き顔を見ると何よりも興奮し昂揚とした気分にさえなったのに。
自分の知っている彼女の身体より一回りは痩せたように思える身体。毎日のように泣いているのが手に取るように分かる彼女の赤く腫れた目。
人の気持ちなんぞを理解しようなど甚だ思ったこともない司だったが、つくしの悲痛な顔から自分の心を抉り取られたかのように心の中に入り込んだ。

最初は、ただただつくしの身を本気で案じていただけなのに。

自分がつくしと最後に会ったあの日の夜。
残っている仕事を片付けようと社に戻った矢先にSPの一人から自分の元に連絡が入った。
いたって簡潔なこと。
『つくしが病院へ搬送された。』と。
文法的に理解出来ても司にはSPが何を言っているのか全く理解出来なかった。
そんなはずはない。
だってほんの数時間前にはつくしといたのだから。
自分と穏やかとは言えない会話を繰り返しながらも確かにそこに存在していたのだから。

耳が本来の機能を失ったかのようにSPの声が大きくなったり小さくなったり。
時々訳の分からない雑音なども入り交じり、頭がおかしくなった気さえした。
気がつくと仕事など全て放り出してつくしの元へ向かっていた。

ほとんど衝動だった。

つくしに張り付けていたSPに場所や状況を確認するため再度折り返すと搬送先の病院でICU(集中治療室)に運び込まれたと伝えられた。
人生でこれほどまでに強く衝撃を受けたことがあるだろうか。
心臓が早鐘を打つ。米神に冷たい汗が流れる。
もしかしたら『恐怖』という感情を覚えたのは初めてだったのかも知れない。
恐ろしかった。怖かった。SPからその先のつくしの話を聞かされるのは。
無意識のうちに携帯の電源を落とし、震え始めた手を必死で抑えた。

つくしを失うのが、その現実を突きつけられるのが死ぬほど恐ろしく死ぬほど怖かった。
心臓が石のように冷たくなり鼓動が止まるかと思うほどに。

得体の知れない感情が自分の心の入り込んだ。
いや、本当はそれが何なのかはとっくに気付いていたのかも知れない。
馬鹿馬鹿しいことだとすぐにその感情を打ち消そうとしてもどうしても心から追い出すことは出来なかった。
そのうちにその感情はいつのまにか自分の身体を覆い、離れてはくれなかった。

それは何か本能的なものだったのかもしれない。
取り憑かれたかのように心に入り込んだ何かが知らぬ間に自分の心を浸食し、かき乱した。

やっと分かったのだ。
魑魅魍魎の世界の中で、自分にとってはまるで悪夢のような世界の中で自分を救っていてくれたのはつくしだけだと。
恐ろしい世界から逃れようと手を伸ばした先には常につくしが存在したことを。
彼女は自分にとっては太陽の光のような存在だった。
眩しすぎて直視する事が叶わないほどの強い光。

それは、ある一つの考えに結びついた。

自分がつくしを愛しているということ。

一度思い浮かべてしまった考えは、まるで賛辞の言葉を受け取るかの如くすんなりと受け入れられた。
至ってシンプルで明快な答え。

____そうだ。俺は、あいつを愛してる。

何故こんな簡単なことに今まで気がつかなかったのだろう、と思うほどにその想いは自分の心を支配した。
いつ頃から愛していたのか、あるいは初めからそうだったのかもしれないが、あのつくしへの執拗なまでの執着心は彼女を愛しているという事だったのだ。
何故今まで気がつかなかったのか自分でもよく分からないが、確かに自分は彼女を愛している。
自分が彼女に向ける感情の中で確かなことはそれだけだった。

そして恐らくは彼女も自分を愛している。いや、愛していた、かもしれないが。
あの悪夢のような暴力の日ですら___やはり彼女は自分を同じように愛してくれた。
彼女はずっと自分を変わらずに愛し続けてくれた。
それを自分は___自分は、ひたすら下劣な態度で応じ続けた。

それと同時に脳裏に過ぎる一つの予感。
自分を最も理解してくれた、最も深い愛情で自分を包んでくれた人を失いつつあるということ。
それはこの世を失う事に等しい。

___何もかもを打ち明けなければいけないと思った。勿論彼女が助かれば、が前提の話ではあるが
___何もかもを打ち明けなければならない。何から言おうか__まずは謝罪の言葉が正当だろう。
それから愛していると、彼女を愛していると真に理解してくれるまで何度でも言わなければならない。
彼女はきっとわかってくれる。
今までだってどんなに最低な行いでも彼女は理解し許してくれていた。
自分がどんなに馬鹿で駄目で最低な人間でも、これだけは理解してくれなくてはならない。

例え彼女が自分を受け入れてくれなかったとしても彼女を失う事は絶対に出来ない。
いかに自分が彼女を愛しているかを伝え、どんな手を使ってでも彼女の心を取り戻すのだ。

再びそう思い直し、心の中にほんの少しの幸福を取り戻した瞬間____その幸せはどのくらい脆く、どのくらい崩れやすいものだったのかに気付いたのだ。

搬送先の病院で聞いたつくしの病名。いや、病名というのは正しくないのかもしれない。
_____切迫流産。詳しく述べると流産になりかけている極めて危険な状態、というものだった。
母体とともに極めて危なく、もしもの時はつくしの身体を優先すると医師から聞かされた。

『流産』『子供』『母体』耳慣れぬ単語の羅列から想像されることなど一つしかない。
つくしは、妊娠していたのだ。
時期的に考えれば間違いなく自分の子供を。
思い当たる節なんぞ考えれば考えるだけ出てくる。
巧とのことがあって以来___つくしを愛するときにはいつだって避妊をしていなかった。
ただ自分の快楽のみを優先させたかったのではない。
ゴム越しではない、直接触れあうことでつくしに自分をより深く植え付けたかったのかもしれない。
勿論子供のことだって無意識のうちに自分の頭の中にはあったことだったが。

あんなに長かった3時間は無かった。
待合室の無機質な感じがよりその怯えと恐怖を際立たせる。

そして、医師の口からある一つの事実を聞いたときに自分がとっくに何もかも失っていた事に気付いた。
母体は助かったが、子供が___流れてしまったと。
駄目になってしまったのだと。
一つの死への憐憫だとかそんなものではなく、そうしてしまったのは恐らく自分のせいだということ。
その事実が自分を奈落の底へと突き落とした。
彼女は一生自分を許してくれないだろう。
自分はもうどれだけ彼女を愛していようと、そう自覚していようと、前までと同じ気持ちで彼女の前に立つことは出来ない。

本来ならばすぐにでも彼女の元へ行き、せめて謝罪をするべきだとは思った。
しかしそうは出来なかった。
もう自分には彼女に許しを乞う資格もないだろう。
そして、何て自分本位な考えのなのだろうとは思っても、彼女から完全に自分を拒否され、怯えられることに何よりも恐怖を感じた。

そして、つくしのいないまま、つくしを愛しているのだと自覚した心を持ったまま抜け殻のように一週間という日々を昨日まで送っていたのだ。

時というのがこんなにも経つのが遅いものだったとは思えないくらいにゆっくりと時間が流れていった。

きっかけは何でも無いことだった。

つくしに付けていたSPからつくしが今日で病院を退院することを聞いたから____。
つくしはきっと退院してしまったらもう自分には手の届かないところに行ってしまうような気がした。
それはそれでいい。もう自分にはつくしを探す気力もなかった。
いい加減で彼女を解放してあげようと自分にしてはかなり高尚めいた考えが浮かんだ。

だけど___最後の最後で結局は欲が出た。
彼女をその前にせめて一目みたい。
どんな会話でもいいから何かを話して彼女との時間を共有したかった。



退院する前日につくしが入院している病室に訪れた。
ドアを開けることすらかなりの勇気を要したが、開けた瞬間飛び込んでいた彼女は信じられないくらいに痩せ細り虚ろな目がただ宙を漂っていた。

そして____自分の目に飛び込んできた彼女の想像以上の拒絶と憎悪の目。
分かっていた。
当然だ、彼女がそんな目で自分を見るのは。
分かっていても、仕方がないことなのだと頭では分かっていても心に疼くどす黒い感情を抑えることが出来なかった。
もしも____もしも彼女がほんの少しでも自分を許すそぶりをしていたら喜んで彼女の足にでも口づけていただろう。
ところが、全く当然の事ではあったが彼女はそうしなかった。
理不尽だと分かっていながらも____この感情を抑え付けることなど到底出来ない

自分が彼女を愛しているのだと彼女に悟られてはいけないと思った。
彼女に最後まで縋り付き、彼女の良心に訴えかけるような卑怯な真似だけは出来ない。
せめてもの自分のプライドだった。
本当は自分が彼女を好きだと、愛しているのだと自覚しただけなのにこんなにも彼女の前で身震いすらしそうな自分に呆れていたのだが。
彼女の前ではいつも通りの『俺』を演じることだけを考えた。
彼女を自分の玩具だと、人形だと考え、人間扱いなどしたこともない自分。
それはそんなに難しいことではなかった。
5年間もの間彼女に接し続けてきた『自分』は、そうしようという意思がなくとも自然に自分から引っ張り出され彼女の前に姿を現した。


彼女に最後にかける言葉は優しい言葉であったらと願っていたのに。
口をついて出てくるのは自分でも信じられないほどに彼女を貶め、侮辱するような言葉ばかりだった。
違うんだ。こんなことが言いたいんじゃないんだ。
よくもこんなに酷い文句が次から次へと自分の口から出てくるものだと自分に感心さえした。
それでも____それでも___そうでもしていなければ『俺はお前を愛している』と気違いのように叫び出したい誘惑に負けてしまいそうだった。
でも、それは決して口に出してはいけない。
それを言ってしまえば何もかもが終了するだろう。彼女の良心に縋り付きたくないプライドは勿論、それを伝え彼女からのさらなる拒絶を感じてしまえば今ある自分はバラバラに崩壊するだろうと、そう考えたからだ。


そして、不意に一つの恐ろしい考えが浮かんだ。


彼女が自分を許してくれることも受け入れてくれることも、ましてや愛してくれることなど、もはや天地がひっくり返ってもあり得ないことだろう。
それならなそれでもいいと思った。
それは至極まともなことなのだから。
彼女に愛されないのだったら自分は___彼女に徹底的に憎まれよう。蔑まれよう。嫌われよう。
そうすれば、自分が彼女の憎む存在となるなら自分はどんな形であれ一生彼女の心には残り続けるのだから。

何て拗くれた、昂揚とした感情。
一旦彼女に触れてしまえば沸き上がる欲望を抑えることなど到底出来ない。
彼女を求めて求めて求め続けて、彼女の下肢から聞こえる水音が自分をまだ好きだと言ってる気がして。
そんな筈無いのだと自分を戒めて。求めては拒否され、拒絶されては欲し続けた。
あんな状況下でも笑えるぐらい彼女の身体に反応する自身に呆れながらも自分の欲望だけを彼女に押しつけ、されるがままに嬲られる彼女を冷静に攻め立てていった。


これが、自分と彼女の最後の逢瀬だろうと、確信めいた予感を持ち続けながら。









_____サイテイ、だな。俺は。


いつまでも止むことの無さそうな雨を憂鬱そうに見つめながら、司は心の中で一人抱えきれぬ程の孤独を噛みしめていた。



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Re: タイトルなし

マリ様^^

コメントありがとうございます。^^
そうですそうですものにはタイミングがあるんですよね・・・
間違いなくつくしの自殺を決定的なものにしたのは司自身。
彼にはこれからどれだけの十字架を背負って生きていかなきゃいけないんでしょうかねえ笑

明日からも更新がんばります!^^
気長に見守ってやって下さい!

Re: タイトルなし

ゆうん様^^

本当にうちの司は大馬鹿野郎です!!
口で言わなきゃ意味ないんですよね!!

彼にはつくしちゃんよりも深く暗い闇のどん底に落ちてもらう予定ですので、乞うご期待下さい^^笑

Re: 馬鹿な男だね

らしゃ様^^

光栄なお言葉の数々ありがとうございます!!!
やーーーー私も本当はつくしちゃん苛めよりも司苛めの方が大好きなんですよ!
私の今までの傾向的につくしちゃんには酷い目にばかり遭わせてしまいましたが・・・
この時点の司は多少つくしを愛していると自覚した時点で矯正された部分もあるかとは思いますがまだまだでございます。ほんとに許してもらうとか愛を囁くとかそういう次元じゃないことに早く気付け!!
記憶を取り戻したらそう言う考えを一瞬でも持ったことに対しても深い後悔というか罪悪感が彼に生まれるのではないかと思います。

そうですね、記憶を失った当初の司のからの性的暴行やDVなど肉体的にも散々痛めつけられたあげくに他の男と寝させられたりかなりの精神的苦痛も強いられていますからね・・・
正直こんなもんじゃまだまだ甘いです!


そしてそして『深海のリトルクライ』という曲・・・早速聞かせて頂きました!
歌詞を読み込めば読み込むほどつくしと重なる部分が多く心に響きました。

「追いかけて掴んだのは残酷な二進法
私は歩くわ降り出した雨よ止まないで
恋してたんだつぶれた声枯らして
愛してますと叫んだんだ」との部分など思わずほろり・・・

素敵な曲を教えて下さってありがとうございます!
これからも更新頑張っていきますのでよろしくお願いします!!
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