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「愛さずにはいられない」
第三章 愛さえあれば

愛さずにはいられない 57

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つくしが一命を取り留めたらしい。

らしい、というのは司がつくしの記憶を取り戻した数日後に秘書である横川からそんなような意味の簡潔な言伝を受け取ったからだ。
本来ならばつくしに土下座でも何でもして謝罪することが正当であろうが、いくら何でもその限度を超えている。
もはや許す許さないのレベルではないのだ。
いくら自分がつくしの安否を自分の目で確かめようと願っていても、自分の姿を見ることすら、つくしの平穏を脅かすことになるかもしれないと知った今はとてもではないがそうすることは出来ない。

つくしがいなければ生きていけないのだと思っていた。
つくしだけが自分の心臓を動かし、つくしだけが自分に呼吸をさせているのだと。
生きていることの意味も人を愛すことの意味も自分に教えてくれたのはつくしだけだった。

では、何故今自分の心臓は動いているのだろう。
何故自分の肺は呼吸という働きを示しているのだろう。
もうつくしに会うことは許されないのに。
もうつくしを一目見ることすら許されないのに。

何故自分は生きているんだろう。

今の自分は余生を送っている感覚さえあった。
考え事するような時間を作らないために必死で仕事を抱え込んでスケジュールを埋め尽くして。
というのも何かをしていない間は自分の思考が何者かによって浸食されているかのように幸せだった頃の自分とつくしの姿が脳裏に蘇るのだ。
お互いに何も持っていなかった。
お互いがお互いを好きだという気持ちだけで成り立っていた笑ってしまうほどに幼くてちっぽけで馬鹿げた恋。

この命を持ってして自分が今までやったことが精算されるのなら、つくしにほんの少しでも安堵やら幸福やら穏やかな感情が訪れてくれるのなら自分は喜んで自分の命を差し出しただろう。
だが、それは所詮自分の自己満足に過ぎない。
自分がそうすることはこの絶望と悲しみの底に沈む自分を救うことになる。
この辛い現実から逃げ出すことになる。
そんなのはあまりにも卑怯な生き方だ。
自分だけ逃げて楽になろうだなんて虫がいいにも程があるだろう。

逃げてはいけない。
楽になってはいけない。

自分が生を終える瞬間まで自分は苦しんで苦しんで苦しみ抜いて___自分の一生を持ってしてでもつくしを苦しめた5年間には到底及ぶとは思えなかったが、弱くて愚かで卑小な自分にはこの生き方こそがつくしへの一番の贖罪になるのだと思った。

つくしを見ることも触れることも、あわや抱きしめることなど到底許されないのだと、その姿を想像することすらつくしに対する冒涜になることを知っているのに。

いつまでも自分は「愛してる」の言葉の意味を教えてくれた彼女の姿を思い返さずにはいられない。
それでも、何故か司の脳裏に蘇る彼女の姿は司と5年間を共にした「つくし」ではなく、彼が高校時代に初めて恋をし、初めて愛した少女の姿だったのだ。


___________まきの_____


その名を音にすることすら今の自分には許されない行為だと知っているからこそ、せめて心の中だけではとつくしの名前を紡ぎ出す。


自分を真に理解し、愛してくれたのは姉の椿を除けばつくしだけだったというのに。
崇拝すら覚えたつくしの存在を自らどん底まで汚し、貶め、ぐちゃぐちゃに踏み潰した。


______ごめん___ごめんな___


恐らく自分は一生こうなのだろう。
もう自分の頭の中にしか存在しないつくしのイメージに取り憑かれ懺悔のように名前を呼んで、自己満足のためだけに謝罪を繰り返すのだろう。
それならそれでもいい。
そうすることでしかつくしへの想いを消化できないのであれば。
死ぬまでつくしへのイメージに取り憑かれ、抱えきれないほどの罪悪を思い出してはのたうち回って、それがどれほどみっともない生き方になろうとも、その生き方がつくしへの贖罪に繋がり、自分への罰になるのならば。





___________________




司がその知らせを受け取ったのは重役会議も終わり、山と積まれていたデスクの書類がようやくキリのよいところまで片付いた夕方のことだった。



溜まっていた決済をあらかた処理し終え、少し息を吐こうとデスクから立ち上がりかけた刹那____不意に内線電話のコール音が聞こえた。

「____ああ、第四専務室_____ああ?東城?____

エントランスの受付からの内線であった。
東城副社長から外線が入っていると。
巧からこの一ヶ月____つまりつくしが自殺未遂を図った日から_____毎日のように秘書室の方には連絡を受けてはいたが直接専務室にまで連絡が来たのは初めての事だった。

恐らくは____つくしの事だろう。
何かあの日以上につくしの身に危ないことでも起きたのだろうか、と一瞬冷静さを見失い巧に問い詰めたい衝動に駆られるが、僅かに残る自分の理性がそれを押さえる。
巧の前ではいつも通りの冷静で冷酷な自分を演じなければならない。
ほんの少しでもつくしに慈愛を見せるような男だと思われてはならない。

一瞬目を瞬き平静を取り戻すと返事を返す。

「____わかった。繋いでくれ。___あ?__ああ、いい。___そう伝えといてくれ。」

ガチャリと受話器を置き直した司は、頭に過ぎる馬鹿げた考えを___恐らく今つくしが最も頼りにしているのが巧だという事実を、それに今にも狂いだしそうなほどの激しい嫉妬をしている事実を振り払うように軽く首を横に振ると外線の4番を押す。


そう考える資格なんぞとうの昔に失っていることを知っていたから。



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